男性は57歳、女性は52歳以下ならば、在職老齢年金制度で悩む必要は『ほとんど』無い
40代は「在職老齢年金」を気にしなくて良い!?
ある日、「定年後は働いても、在職老齢年金で取られてしまうだけだから、早期退職制度では働かない」という趣旨のブログを見つけました。
プロフィールを見ると、まだ40代の方のようです。
結論から言うと、この判断は正しいとは言えません。
この方が年金を受け取り始める頃には、在職老齢年金に関する事情が変わっているからです。
実は、“1961年4月2日以降に生まれた男性および、1966年4月2日以降に生まれた女性”ならば、在職老齢年金のことは、『ほとんど』考えなくても良いのです。
2018年の時点の年齢で言うと「男性は57歳、女性は52歳」から下の人が対象です。
この記事では、その理由をできるだけ簡単に説明しましょう。
賃金が多いと年金が削られる「在職老齢年金」
ここでは、「在職老齢年金」について、次の4つだけ覚えてください。
- 厚生年金に加入している従業員が対象
- 年金と賃金を同時に受け取り、その合計が「基準額」を超えると、年金が減らされる
- 年金を受け取る人が「60~64歳」と「65歳以上」では制度が異なる。
- 「基準額」は、「60~64歳」では「月28万円」、「65歳以上」では「月47万円」。
「60~64歳」で在職老齢年金の対象となっている人は、その年代で年金を受け取っている人の19%もいます。実数で言えば88万人です。
これだけでもかなり高い割合ですが、実際に支給停止を受けている人以外にも、影響は及んでいます。
「在職老齢年金制度に引っかからないように」という理由で、賃金が抑えられている60~64歳の人がたくさんいるのです。
さらに、在職老齢年金の対象となるのを避けるために、社員を辞めて、パートや社外スタッフになる例もあります。
このように、在職老齢年金制度の対象になっていなくても、多くの人が悪影響を受けているのです。
なお、「65歳以上」で、在職老齢年金の対象となる割合は、年金を受け取っている人全体の約1.4%しかいません。
規定の金額が高いので、会社役員など、一部の人だけが注意すれば良いでしょう。
同じ「在職老齢年金」でも、「60~64歳」と「65歳以上」では、厳しさがまったく異なるのです。
65歳以前に年金を貰える人がいなくなる
こんなに怖い「60~64歳」の在職老齢年金制度ですが、終わりが来る日が決まっています。
その理由を紹介しましょう。
現在の年金制度は、「65歳支給開始」が基本となっています。
つまり、「60~64歳」に年金が支給される人は、例外的な存在なのです。
その例外とは、年金の支給開始を60歳から65歳へと引き上げるときに、経過措置として用意された「特別支給の老齢年金」です。
「特別支給の老齢年金」は、経過措置ですから、期限があります。
男性は1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降に生まれた人は、「特別支給の老齢年金」が受け取れません。65歳以前にはもらえる年金が無いのです。
つまり、この時点で、「60~64歳の在職老齢年金」という制度は対象者がいなくなり、事実上の終わりを迎えるのです。
もちろん「65歳以上の在職老齢年金」は残ります。しかし、さきほど見たように、この制度の対象者は少なく、年金受給者全体の1.4%しかいません。
多くの人にとって、『ほとんど』気にする必要はありません。
「在職老齢年金」以外の理由で働き方を決めよう
1961年4月2日以降に生まれた男性および、1966年4月2日以降に生まれた女性は、在職老齢年金について、あまり気にする必要がないことが分かりました。
この年代以降の人は、定年後の働き方については、在職老齢年金という制度にとらわれる必要が『ほとんど』無くなります。
そうであれば、定年後の働き方は、自分の経済状態や、家族の状況、人生の目的などによって決めるべきでしょう。
ただし、定年が「60歳」とすれば、平均余命は男性で23年、女性は29年もあります。
余生というには、あまりにも長いので、よく考えて判断してください。