60歳を過ぎて働いていると年金が減らされる「在職老齢年金」というワナ

[2016/1/30 03:28]

60歳以降に働いていると、年金が減らされることがある

「在職老齢年金」は、老齢厚生年金の制度の一部です。

60歳を超えて、老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険のある事業所で働いていると、報酬(給与)に応じて年金が減額(支給停止)されます。

年金も報酬も自分の労働の成果なのに理不尽と感じるかもしれませんが、いろいろな経緯の末に、今のような制度があります。

まず、制度の仕組みを簡単に説明し、この制度によってどのように働き方を変えれば良いのか考えてみましょう。

「65歳未満」と「65歳以上」で減額が始まる限度が異なる

在職老齢年金は、「毎月の報酬」と「年金の月額」の関係で、減額される金額が決まります。

減額される金額を計算する方法は、「65歳未満」と「65歳以上」では異なっています。

「65歳未満」から見てみましょう。

まず「毎月の報酬」と「年金の月額」の合計が「28万円以下」ならば、年金は減額されません。

「28万円を超える」場合は、減額されますが、金額の計算式が複雑なので、ここでは説明しません。下の早見表をご覧ください。

グレーの網がかかった部分が年金が減額された部分です。

報酬と年金の合計で見るので、かなり少ない金額から減額が始まることがわかります。

在職老齢年金として受け取れる年金の金額(65歳未満用)

なお、正式には、「毎月の報酬」は「総報酬月額相当額」、「年金の月額」は「基本月額」と言います。資料などを調べるときは、そちらの言葉で検索してください。

65歳以上は計算が簡単

在職老齢年金の「65歳以上」の場合の計算式は1つだけです。

(総報酬月額相当額+基本月額ー47万円)×1/2

つまり、「毎月の報酬」と「年金の月額」が47万円を超えなければ、減額が始まりません。

上の表と見比べると、減額される範囲がずっと狭くなっているのがわかります。

在職老齢年金として受け取れる年金の金額(65歳以上用)

ネックは「65歳未満」の制度

以上で、在職老齢年金の計算方法はわかりました。

結論としては、65歳以上の制度は、「毎月の報酬」と「年金の月額」の合計が47万円以上だけが対象なので、あまり気にしなくて良いでしょう。

しかし65歳未満の制度は制限が28万円以下と厳しいので働き方に影響します。

さらに雇用保険には「高年齢雇用継続給付」という、60歳以上で賃金が下がった場合に補助金が出る制度があり、これを貰うと在職老齢年金が、また減額されてしまうという。どうすれば得なのか、なかなか一言では言えない状況にあります。

雇用する会社側の方針もあるので、自分自身で決められない部分もありますが、60歳以降働き続ける場合は、どのような方針で働くのかを決め、その上で、働き方や賃金を会社側と相談するべきでしょう。

少なくとも、つぎの2つの働き方のどちらを選ぶかは考えておきましょう。

  • 在職老齢年金が減額されない範囲内で、生活とのバランスを取りながら働く
  • 多少の減額は気にせず、フルタイムで働き続ける

年金支給開始が65歳になることとの関係

もう1つ考えて置かなければならない要素があります。

それは、「年金の支給開始が60歳から65歳へと引き上げられつつある」ということです。

さきほど、「65歳未満の在職老齢年金は制限がきつい」という話をしましたが、そもそも、ある年齢から下の人にとっては、厚生年金の支給が65歳から引き上げられてしまうため、在職老齢年金は関係ありません。

年金の支給開始年齢が65歳になるのは、男性が「1961年4月2日以降生まれ」、女性が「1966年4月2日生まれ」の人です。

つまり、在職老齢年金について考える必要があるのは、今の時点で、男性は54歳以上、女性は49歳以上の人に限られます。ご自分の年金支給開始年齢を確認して、60歳以降の働き方を考えましょう。

厚生年金の支給開始年齢。男性の61歳への引き上げはすでに始まっている

在職老齢年金ができた背景と動向

最後に、在職老齢年金ができた理由と、今後の変更の見通しを考えてみましょう。

実は1954年に老齢年金制度ができたときは、仕事を「退職」していないと年金がもらえませんでした。つまり、「在職中は年金を支給しない」ことが原則だったのです。

しかし、高齢者の賃金は低く、賃金だけでは生活できないため、1965年から在職中でも年金が貰えるようになりました。これが「在職老齢年金」の始まりです。ただし、退職者の年金の8割しか支給されませんでした。

それ以降、「在職老齢年金」の制度は、いろいろ変更されたのですが、次の2つの意見に挟まれて揺れ続けてきました。

  • 働いても年金が不利にならないようにすべき。そのほうが労働意欲を削がない。
  • 現役世代とのバランスから、一定の賃金を有する高齢者については給付を制限すべき。そのほうが現役世代の負担が軽減できる

現在の制度は、2つの異なる立場からの意見の妥協の産物と言えます。

今後の年金の動向を決める厚労省の「社会保障審議会年金部会」の資料を見ても、両論が併記されている状態なので、当面は現状の制度が続くと思われます。

いろいろと面倒くさい制度ですが、定年を間近にした世代には避けて通れない話題です。60歳以降にどのように働くのか考えるきっかけと捉えてください。

[シニアガイド編集部]