インプラント治療の経験者500人に聞いた「長所」と「短所」
インプラント体験者に実状を聞く
国民生活センターは、歯科のインプラント治療を受けた経験者に対するアンケート結果を公開しています。
このアンケートは、「インプラント治療」に対する相談が多いことを受けて行なわれたものです。
2019年1月から2月にかけて行なわれたインターネット調査には、30代から70代のインプラント手術経験者500人が回答しています。
歯科における「インプラント治療」とは、歯が抜けたところの顎(あご)の骨に人工の歯根(しこん)を埋め込み、その上に人工の歯を作る治療方法です。
インプラント治療の特徴は、ブリッジや入れ歯のように残っている歯に負担をかけずに、しっかりと人工の歯を固定できることです。
「ブリッジ」や「入れ歯」より評価が高い
「インプラント治療」と比較するために、「ブリッジ治療」と「入れ歯治療」の経験者、各500人にもアンケートを行ない、それぞれの治療方法に対する評価を聞いています。
インプラント治療に対する評価は高く、「満足」と「どちらかといえば満足」を合わせると85%に達しています。
インプラントの評価は、ブリッジや入れ歯に比べて高く、自分が受けた治療に対して満足している人が多いことが分かります。
「よく噛める」が「値段が高い」
「インプラント治療の長所と短所」を聞いています。
長所では「よく噛める」が、短所では「治療費が高額」が、他の選択肢よりも多くなっています。
インプラント治療は、「よく噛めるようになるが、治療費が高額な治療方法」と感じている経験者が多いようです。
特殊な条件を除いて、インプラント治療は健康保険の対象になりません。
自由診療として、全額が患者の負担となるので、治療費を高額と感じることが多いのでしょう。
「かかりつけ」に頼む人が多い
「インプラント手術を受けた歯科医を選んだ理由」を聞いています。
一番多いのは、以前から治療を受けている「かかりつけの歯科医」でした。
少し離れて「医療機関が自宅に近い」と「手術実績数が多いとうたう医療機関」でした。
一方で、「歯科医師のプロフィールを見て(専門医、指導医など)」という人もいます。事前にここまで慎重に調べておけば、納得がいく選択ができるでしょう。
説明を受けた記憶がある人は半分
インプラント治療は手術を伴いますから、事前の説明や了解が欠かせません。
しかし、「治療期間」や「治療費」という重要な項目でも、説明された記憶がある人は、半分程度に留まっています。
ここまで割合が高いと、歯科医に説明されていても、忘れてしまった人が多いのでしょう。
口頭だけではなく、重要事項を書いた書類がほしいところです。
しかし、「口頭で説明された上に、書面を渡された人」は多くありません。
「CT検査」は6割が受けている
また、インプラント治療の手術の前に、治療する部分や身体の状態について確認することも重要です。
「アゴの骨のCT検査」は60%以上の人が受けていますが、それ以外のチェックを受けている人は半分以下に留まっています。
メインテナンスの必要性が伝わっていない
インプラント治療は、手術後のメインテナンス(定期点検)が欠かせません。
しかし、インプラントを入れた人のうち3分の1は、メインテナンスを受けていません。
メインテナンスを受けていない理由としては、「異常や違和感がない」や「都合が合わなかった」「費用が高い」など、患者側の都合によるものが多くなっています。
しかし、「歯科医師から指示がなかったから」という回答のように、メインテナンスの必要性が伝わっていない例もあります。
国民生活センターの3つのアドバイス
国民生活センターでは、寄せられた相談やアンケート結果を受けて、「インプラント治療を受ける消費者へのアドバイス」として、次の3つを挙げています。
- インプラント治療を受ける場合は情報を収集し、治療前には歯科医師に口腔内及び全身の状況、治療方法や費用、リスク等に関する説明を求めましょう
- インプラント治療で不具合が生じた場合は、他の医療機関への相談も検討しましょう
- 歯科インプラントを長持ちさせるには、自分自身での適切な口腔清掃と定期検診やメインテナンスが欠かせません
インプラント治療の記録をもらおう
国民生活センターのアドバイスに加えて、もう一つ利用したいツールがあります。
歯科のインプラント治療に関して有力な学会に、「日本口腔インプラント学会」や「日本顎顔面インプラント学会」があります。
そして、それぞれが、インプラント治療の記録を患者の手元に残すための手段を用意しています。
- 「口腔インプラントカード」|日本口腔インプラント学会
- 「国際インプラント手帳」|日本顎顔面インプラント学会
いずれも、歯科医が、パソコンとオフィスソフトを使って作成できるものです。
インプラント治療を受ける際は、あらかじめ「先生の所属されている学会の形式で良いので、治療記録のカードか手帳をください」と伝えておきましょう。
この記録があれば、他の歯科医に意見を求めたり、転院する際にも、インプラント治療の状況が把握できます。
インプラントは、自分の口の中で長い時間を共にする存在です。
あらかじめ、長い付き合いになることを前提にして、情報収集に努めましょう。