総務省、ふるさと納税で寄付が多い自治体への支援をバッサリ削減

[2019/3/25 00:00]
石田真敏 総務大臣

4つの地方自治体に対して交付金を減額

総務省は、平成30年度の「特別交付税」について、4つの市と町に対して減額を行ないました。

減額されたのは3月の支給分で、対象となったのは4つの市と町です。

  • 大阪府 泉佐野市
  • 静岡県 小山町(おやまちょう)
  • 和歌山県 高野町
  • 佐賀県 みやき町

4つの市町では、総務省から受け取る交付金が、昨年に比べて数千万円から数億円の単位で減ることになります。

財政状況が良いから減額した

この件について、石田真敏 総務大臣は会見で、次のように述べています。


 4団体は多額のふるさと納税収入があることによりまして、地方税収にふるさと納税収入を加えた場合の財政力を見ますと、実質的に平均的な不交付団体を上回る財政力を有することになるわけであります。

 このため、不交付団体並みの扱いとすることといたしておりまして、これを特別交付税省令に定めまして、災害分以外については交付しないこととしておるわけであります。

つまり、ふるさと納税による寄付額が多いので、財政的に余裕があって「特別交付税」が支給されない「不交付団体」として扱うということです。

財政が豊かな不交付団体は、全国でも78しかありません。

都道府県レベルで言うと、東京都以外のすべての県が、「特別交付税」の支給対象となっています。

多くの地方自治体にとって、総務省からの「特別交付税」の支給は必須であり、これを前提に予算を組んでいます。

つまり、「特別交付税」をカットされることは、地方自治体にとってはかなり痛い処置なのです。

「懲罰」ではないと言い張る総務省

泉佐野市を始めとする、4つの市町は、いずれもふるさと納税において、総務省の通知を無視していました。

総務省が、2018年11月の次点で行なった調査でも、「地場産品以外を返礼品としない」「返礼品の割合を寄付額の3割以下にする」の2つのルールを守っていない団体として名前が上がっていました。

しかし、今回の「特別交付税」の減額について、石田真敏 総務大臣は次のように述べています。


 今回の対応は、先ほども申し上げましたけれども、財源配分の均衡を図る観点から行なったものでございまして、過度な返礼品等を行なう地方団体のペナルティといった趣旨で行なったものではございません。よろしくお願いします。

つまり、懲罰ではなく、収入の増加に伴う調整であるというわけです。

対象となった4つの地方自治体にとっては、素直に受け取りにくい説明でしょう。

例えば、昨年11月の次点では、次の7つの団体が、2つのルールを守っていないとされていました。

  • 宮城県 多賀城市
  • 新潟県 三条市
  • 大阪府 泉佐野市
  • 和歌山県 高野町
  • 福岡県 福智町
  • 福岡県 上毛町
  • 沖縄県 多良間村

ここには,泉佐野市と高野町は入っていますが、小山町とみやき町は入っていません。

なぜ、多賀城市、三条市、福智町、上毛町、多良間村が減額されず、小山町とみやき町が減額されるのかは説明がありません。

総務省の判断基準が明確ではないため、かえって地方自治体への圧力という印象が強くなっているのです。

できれば「小山町はAmazonギフトカードやJCBギフト券などのプリペイドカードを、さらに、みやき町はiPad、ダイソン、バルミューダ、Apple Watch、炊飯ジャー、ロボット掃除機、テレビ、シェーバー、ヘルシオ グリエ、空気洗浄機などの換金性の高い家電もばらまいたから」と言ってくれたらすっきりしたでしょう。

法律的な裏付けがないため、そう言えないのは仕方のないことですが、明確な基準が示されずに、「特別交付税の減額」という裏技的な手段に出たことによって、今後の運営に影響がでることが心配されます。

6月からは法律による縛りが始まる

なお、ふるさと納税については、返礼品を「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」に規制する地方税の改正案が国会で審議されています。

2019年3月末までに成立すれば、6月1日以降は違反自治体に寄付した場合は、ふるさと納税制度に基づく税優遇が受けられなくなります。

つまり、6月以降は、法律の裏付けがある状態で、返礼品に縛りが入るわけです。

今後は、改正案の成立後に、総務省がどの自治体を“規制に違反した自治体”として指定するかが注目されます。

[シニアガイド編集部]