年金がゼロの「無年金者」は、75歳以上で54万人もいる

[2019/4/2 00:00]

年金は10年払わないと「ゼロ」になる

日本の年金制度は、定められている期間の保険料を支払わない限り、1円ももらえません。

例えば、65歳以上になると貰える、国民年金の老齢基礎年金をもらうためには、10年間(120カ月)以上は保険料を納めている必要があります。

支払った期間が10年間に満たなければ、年金は出ません。「ゼロ」なのです。

このように、年金がもらえない状態になっている人を「無年金者」と呼びます。

では、そのような「無年金者」は、どれぐらいの割合で存在するものなのでしょう。

厚労省の資料を使って調べてみました。

「無年金者」の割合は3.2%

今回は、後期高齢者医療制度の資料を使っています。

なぜ、年金のことを調べるのに、健康保険の資料を使うのでしょう。

実は、後期高齢者医療制度では保険料を計算して徴収するために、加入者全員の収入を把握しているのです。

対象者が、ほぼ75歳以上に限定されてしまうという制約はありますが、無年金者の割合を調べるには、最適の資料なのです。

2018年の後期高齢者医療制度の75歳以上の加入者は「1,711万人」でした。

このうち、「無年金者」は「54万771人」ですから、全体の3.2%にあたります。

「3.2%」という数字が多いか少ないかは判断が難しいところですが、年金がゼロの人が「54万人」もいるというのは重い事実です。

そして、「無年金者」の割合は、年代によって差があります。

「70代後半」から「80代後半」では、3%前後です。

しかし、「90代前半」では4.7%、「90代後半」では6.6%、「100歳以上」では10.6%でした。

つまり、年齢が高くなると、無年金者の割合も高くなっていきます。

出典:データを基に編集部が作成

これは、年金制度が始まった時期が原因でしょう。

国民年金の制度が完成したのは、1960年頃でした。

90代以上の人は、このころには、すでに社会人となっていた人が多く、なじみのない年金制度に加入しなかった人が多いのでしょう。

年金の金額は「50~80万円」の人が多い

無年金者の割合は、ごく少ないことが分かりました。

では、90%以上を占める「年金を受け取っている人」は、どれぐらいもらっているのでしょうか。

後期高齢者の1人当りの年金の年額は「129万5千円」でした。

しかし、実際に貰っている金額で一番多いのは「50~80万円」でした。

「50~80万円」という人は、国民年金の加入者で、満額かそれに近い金額を受け取っている人でしょう。

国民年金を40年払った場合を満額と言い、2019年度は年に「779,300円」受け取れます。

次に多いのが「100~150万円」です。

これは、10~15年ぐらい厚生年金に加入していた人でしょう。

例えば、結婚後に会社勤めを止めて、専業主婦になったというパターンです。

出典:データを基に編集部が作成

70代後半に限ると「200~250万円」の人が増える

もう少し年代を絞って、「70代後半」の年金収入を見てみましょう。

「70代後半」は、将来の自分の人生としても、リアリティがある年代でしょう。

やはり、一番多い年金額は「50~80万円」でした。

2番目も、全体と同じ「100~150万円」です。

ちょっと違うのは、「200~250万円」という人の割合が高いことです。

年金がこの金額になるには、かなり長い期間、厚生年金や共済に加入している必要があります。

例えば、若い頃から定年まで、厚生年金のある会社で、サラリーマンとして働いてきた人が多いのでしょう。

出典:データを基に編集部が作成

公的年金は払った保険料が金額に反映される

今回の数字はどんなときに役に立つのでしょうか。

例えば、年金生活を送る親の収入が知りたいときに参考になります。

たとえ、自分の親であっても、受け取っている年金の金額を正面から聞くことにはためらいがあります。

しかし、親の人生が、下の4つのパターンのどれにあてはまるか考えれば、一つの目安となるでしょう。

  • 年金保険料を払っていない 「無年金者」
  • 国民年金の加入者 「50~80万円」
  • 10年程度厚生年金か共済に加入 「100~150万円」
  • 長期間厚生年金か共済に加入 「200~250万円」

その人が受け取れる年金の金額は、その人が現役時代にどのように年金保険料を納めてきたかによって決まるのです。

自分の将来の年金額を知りたいときも、これらの数字が参考となるでしょう。

[シニアガイド編集部]