「不指定になったプロセスに問題がある」と泉佐野市が反論
6月1日から新制度に変わる「ふるさと納税」
2019年6月1日に、ふるさと納税の制度が変わり、総務省の指定を受けた自治体以外への寄付は、ふるさと納税と認められず、住民税の控除対象でなくなります。
ふるさと納税のメリットは、例えば1万円の寄付をした場合、8,000円分については、住民税から控除されて戻ってくることにあります。
つまり、実質2,000円で、寄付した自治体からの返礼品が受け取れるのです。
しかし、指定を受けていない自治体には1万円寄付しても、8,000円の住民税が戻ってきません。
総務省の指定を受けていない自治体は、次の5つです。
- 東京都
- 静岡県:小山町
- 大阪府:泉佐野市
- 和歌山県:高野町
- 佐賀県:みやき町
この中で、「東京都」は、ふるさと納税という制度に反対するという立場から、自ら申請をしませんでした。
しかし、他の4つの自治体は、総務省の判断により指定されませんでした。
これらの自治体への寄付は、「ふるさと納税」では無くなってしまうのです。
指定を外された泉佐野市が反論
指定を外された自治体のうち、泉佐野市は公式サイトに反論を掲載し、次のように主張しています。
- 昨年11月以降、本市を含めた4自治体以外にも総務省の技術的助言の基準を満たしていない自治体がいくつも存在していたにも関わらず、4自治体だけが制度の対象外となったのか。そこには総務省の恣意的な判断があったのではないか。
- そして、そもそも法施行前の取り組みを踏まえるという行為は「法の不遡及」という原則から逸脱しており、法治国家としてあってはならない権限の濫用ではないのか。
さらに、泉佐野市が考える「ふるさと納税」について、制度の創設時にまで、さかのぼった長文の見解を公開しています。
その上で、「本市はこれまで確固たるスタンスや考えに基づいて、ふるさと納税に向き合い、適正に制度運用を行なってきたという自負がある」と主張を述べています。
判断の手順には問題は無かったという総務省
これを受けて、5月17日の石田真敏総務大臣に対する記者会見の席で、「指定をしなかったという、判断プロセスに問題はなかったか」という質問が行なわれました。
総務大臣は、次のようなプロセスを挙げて、判断には問題がなかったとしています。
- 2017年4月以降、2度にわたって総務大臣通知を出している
- 特にルール外の返礼品を送付している地方団体は、2018年9月に個別にも見直しを要請した
- 2018年11月1日時点の調査までに返礼品の見直しを行なっていただきたいこと、また、11月以降の返礼品の送付状況を新たな制度に基づく指定を検討する際の参考とする旨を伝えてきた
- 全国市長会及び全国町村会においても、総務大臣通知に沿った対応をとるよう申し合わせ等が行なわれている
- 指定に当たっては、提出された申出書等の内容についてヒアリングを行ない、結果として不指定となった4団体からのいずれも、直接意見を聞いている
- 地方財政審議会においても複数回審議が行なわれた
また、「不指定となった4つの自治体が今後再指定されることはありうるのか」という質問に対しては、「平成30年度のふるさと納税受入額の数値がまだ確定した段階で、地方財政審議会において議論をいただくことを予定している」と再指定の余地があることを示しました。
しかし、「不指定となる期間につきましては、今回不指定となった地方団体の募集の実態や、ルール外返礼品によって受け入れた寄附額の規模等に応じて、今後検討していくことになる」と、無条件の再指定ではないことを明らかにしています。
6月からの新しい「ふるさと納税」の姿
ふるさと納税については、返礼品競争の加熱などから批判の声が高まり、最終的には法律の改正によって自治体の行動が制約されることになりました。
地方自治の精神からすれば、法律を改正して枠をはめなければ競争が止まらなかったことは残念な事態と言えるでしょう。
しかも、その法律の施行まで期間があることを利用して、泉佐野市では5月末までAmazonギフト券などを還元するキャンペーンを行なっています。
泉佐野市では、これを「除外期間に逸失するであろう寄附額を補填し、何よりも市内事業者の救済・雇用の維持を行なうため」としています。
しかし、実際には泉佐野市とAmazonの利益になっているだけという批判もあります。
早い時期に総務省に従った自治体においても、それぞれの意見があり、今後のふるさと納税への対応にも差が出てくるでしょう。
改正された法律が施行される、2019年6月以降に「ふるさと納税」という制度が、どのように変わっていくのか、まだ見守る必要があるようです。