かんぽ生命が、今の契約よりも不利な保険に乗り換えを勧誘

[2019/6/26 01:27]

「かんぽ生命」が不当な勧誘

日本郵政グループの保険会社「かんぽ生命」について、不適切な取り引きがあることが明らかとなりました。

しかし、実態調査の結果などは一部の報道機関向けに公開されるに留まっており、一般には明らかにされていません。

現状では、次のような報道がなされています。

  • 新規契約に対する手数料収入を目的として、既存の契約を解約して顧客に不利な新契約へ乗り換えさせている
  • 2018年11月分の新規契約を社内調査したところ、約2万件の契約乗り換えのうち、「顧客にとって乗り換えの経済合理性が乏しい」と判断した契約が約5,800件あった

つまり、新規契約の4分の1は、既存の有利な契約を止めさせて、新しく不利な契約に乗り換えさせていたのです。

実態は把握しているが「指導」に留まる総務省

これに対して、監督官庁である総務省の石田真敏大臣は、2019年6月25日の記者会見で次のように述べています。


 かんぽ生命の社内調査により、昨年11月の新規の契約の中で「外形的に合理性が疑われる乗換契約」が約5,800件あったことについて、総務省として報告を受けております。

 総務省としては、かんぽ生命の保険の募集について、不適切な営業が認められたことから、昨年4月、日本郵便に対し適正な営業を行なうよう指導したところであります。

 ところが、かんぽ生命ではその後も、今回の乗換契約も含めまして改善が十分とは認められておりません。

 また、ゆうちょ銀行においても顧客情報の紛失、高齢顧客に対して社内規則に違反した投資信託の販売など、コンプライアンス違反が6月に判明したところでございまして、このため、6月19日に日本郵政株式会社に対し、郵政グループ全体としてコンプライアンス遵守と営業活動の適正化について指導を行なったところでございます。

 総務省としては、郵政グループの今後の取組を注視してまいりたいと考えております。

報道されているような事実関係は把握しており、指導を行なったとしています。


 先ほど申し上げましたように、6月19日に日本郵政に対しまして、郵政グループ全体としてコンプライアンス遵守と営業活動の適正化について指導を行なったところでありまして、おそらくそれに基づいて、日本郵政がグループ全体について適切に対応されると思いますので、そういうような取組を我々としては注視してまいりたいと思っております。

今後の対応については、日本郵政グループの対応を待つとしていますが、期限は区切られていません。

総務省としては、追加調査の要請などを積極的に行なう予定はないことがわかります。

もう一つの監督官庁である金融庁が調査に乗り出したという報道もありますので、そちらに期待するしかありません。

乗り換えに応じてはいけない

気をつけなければならないのは、総務省や金融庁が行動を起こす前に、かんぽ生命が駆け込みで新規の契約を勧誘する可能性があることです。

どのように対応すれば、私達は保険という資産を守ることができるのでしょうか。

一番大切なのは、「過去の契約を止めて、新しい契約にしましょう」という勧誘には応じないことです。

保険という商品は、そのときどきの金利をもとにして、設計されています。

過去の保険は、現在よりもずっと高かった金利をもとにして設計されています。

積み立て貯金のような性格の商品について言えば、現在のような低金利の状態で販売されている保険商品よりも、利息が高くなっています。

つまり、古い保険から、新しい保険に乗り換えることで、将来戻ってくる保険金が少なくなってしまうのです。

保険会社にとって、過去の高金利な時代の保険から、現在の利息が安い保険に乗り換えてくれることは、とてもありがたいことなのです。

また、保険を勧誘している担当者にすれば、新規の契約をすることで、それに伴なう報奨金が手に入ります。

かんぽ生命に限らず、保険の勧誘員から、「その保険は古くなったから乗り換えましょう」と言われても、それに応じてはいけません。

現在の日本の金利は、過去の歴史にない水準の低金利です。

つまり、過去の保険は、現在販売されている保険よりも、有利である可能性が限りなく高いのです。過去の保険を「お宝保険」という人がいるのは、理由のあることなのです。

経済合理性が乏しい勧誘を受けたら、はっきりと断ることで、過去に積み立ててきた自分の保険を守りましょう。

[シニアガイド編集部]