「保険が無くなった」「保険金が支払われない」など、危険な事例が明らかになった「かんぽ生命」

[2019/6/28 07:26]

かんぽ生命がようやく情報を公開

「かんぽ生命」が、本人に不利になるような保険契約に乗り換えをさせていた問題について、6月27日にニュースリリースを公開しました。

このリリースによって、単に不利な保険に乗り換えさせられたにとどまらず、「新しい保険に入れず保障が無くなった」など、信じられないような事例が発生していることが明らかとなりました。

乗り換えできず、保険が無くなってしまう

今回、問題となっているのは、古い保険を解約し、新しい契約に加入する「契約乗換」と呼ばれる手続きです。

一般的な生命保険の場合、加入者が保障内容を見直す場合は、2つの方法があります。

  • 古い保険を下取りする形で新しい保険に加入する「契約転換制度」
  • 本体の保険は、そのままにして、保険や特約を追加する

しかし、かんぽ生命には「契約転換制度」がありません。

いったん古い保険を解約する必要があるのです。

解約後に新しい保険に入れれば良いのですが、過去の病気や慢性病などの問題で、新しい保険に入れなかった例が見つかりました。

つまり、過去の保険をそのまま維持していれば、保険による保障があったのに、いったん解約してしまったことによって、保険による保障が無くなってしまったのです。

そのまま古い保険に入っていれば何の問題もなかったのに、セールスの口車に乗ってしまったがために、これからの人生の保障がいきなり無くなってしまったのです。

本当に必要になったときに保険金が支払われない

さらにひどい例として、「保険金の支払謝絶」も明らかになりました。

これは、「契約乗換」によって、新しい保険に加入する際に、過去の病気などによって加入が難しい人に起こっています。

さきほど述べたように、すでに古い保険は解約されていますから、もとの保険に戻ることはできません。

そのため、健康状態を偽って申請し、新しい保険に加入させてしまうのです。

しかし、入院するなど、保険金が支払われる状況になったときに調査されると、偽りがバレてしまいます。

そうなると、「健康状態を正確に告知していない」として保険が無効となり、保険金が支払われないのです。

つまり、せっかく保険に入って、毎月の保険料も払っているのに、いざ、必要になったときに「保険金の支払いは謝絶させていただきます」と言われてしまうのです。

こんな理不尽な話はありません。

5年間で2万人以上に影響

かんぽ生命によれば、このような不条理な扱いを受けた人は、かなりの数に上ります。

  • 契約乗換に際し、引受謝絶となる事例 15,800件
  • 契約乗換後、告知義務違反により保険金が支払謝絶等となる事例 3,100件
  • 保険の乗り換えの必要がなく、特約切替等対応できた事例 5,000件

もろもろの事例を合わせると、2万人以上の人が被害を受けています。

しかも、これは過去5年分の推定であり、実数はもっと多いでしょう。

しかし、例えば入院について言えば、病院のカルテの保存期間が5年ですから、それ以前の事例については、被害を受けたという証明をすることは簡単ではありません。

これらの事例について「かんぽ生命」は、調査の上で、「乗換前の契約を復元」したり、「復元後の契約から保険金を支払う」などの対応をすると言っています。

しかし、別に割り増しなどがあるわけではありません。以前の保険にそのまま入っていれば、何の問題もなく受け取れた金額が、そのまま返ってくるだけなのです。

いまある保険契約は「大切な財産」

なによりも問題なのは、今回のリリースが「謝罪」ではないことです。

リリースの表題は「保障の見直し時等におけるお客さま本位の業務運営のさらなる向上について」です。

これは「これまでもちゃんとやってきたけど、都合の悪い例が見つかったので努力します」と言っているだけであって、謝罪や賠償ではありません。

明らかとなったような問題は、小さな問題であり、正常な営業活動の範囲内であるという認識なのでしょう。

「かんぽ生命」については、高齢の方ほど、「郵便局の簡易保険」時代の印象が強く、任せておけば大丈夫と信用している例が少なくありません。

しかし、「かんぽ生命」の実態は、こちらにスキがあれば、ノルマのために客が不利になるような保険の乗り換えを勧めてくる単なる営利企業なのです。

若い頃に加入した保険は、過去の自分の健康状態と、現在まで支払ってきた保険料が反映された「大切な財産」です。

せっかくの財産を、台無しにされないように、「保険の乗り換え」という言葉に惑わされないように気をつけてください。

[シニアガイド編集部]