3年に1度は投資が赤字。でもトータルで黒字のGPIFに学ぶこと
「投資」をすると、どれぐらいお金が増えるの
定年後の生活に関する本やムックを読んでいると、「老後の生活に備えてiDeCo(イデコ)や、つみたてNISAで、長期的な投資をしましょう」という趣旨のことが書かれています。
iDeCoや、つみたてNISAでは、自分で投資の対象を選ぶ必要がありますが、現状では、株式に投資する投資信託を選ぶ人が多いようです。
では、この投資によって、どれぐらいお金が増えるのでしょうか。
投資を始めたばかりの頃は、その感覚というか基準がわかりません。
ひどい場合には、投資とバクチの区別がついておらず、「株に投資すると、お金が2倍とか3倍になるんでしょう」という人もいます。
それぐらい、私達は「投資」ということに対する感覚を持っていないのです。
ここでは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用結果から、自分が投資する際の目安を探ってみましょう。
3年に1回は負けている
GPIFは、私達の年金の積立金を、国債や社債などの債権や株式に投資をしている機関です。
GPIFは、その前身を含めると、2001年度から18年間に渡って、投資を続けています。
投資の内容は、株式と債券に半々ぐらいの割合です。ですから、株式だけに投資する場合に比べれば、リスクは低めです。
では、GPIFは18年間に、どれぐらい勝っているのでしょうか。
下のグラフは、GPIFの年度ごとの収益です。
1年間の運用の成果がプラスだった年は「12回」、マイナスだった年は「6回」でした。
つまり、18年間の勝敗は、12勝6敗です。
勝率にすると66%ですから、3回に1回は負けていることになります。
GPIFは国の年金を預かっている機関ですから、運用している金額は巨額です。そのため、投資をサポートする会社を利用するなど、恵まれた投資環境にあります。
また、株式だけではなく、債権にも投資することでリスクを下げています。
それでも、3年に1回は負けているのです。
頑張って投資をしても利益は「3%」
今度は「利益」で見てみましょう。
2018年度のGPIFは、「2兆3,795億円」という巨大な利益を生み出しています。
もともと動かしているお金が大きいので、利益も巨額になるのです。
しかし、これを「利益率」で見ると「+1.52%」になります。
例えば、1万円を1年間運用したとすると、利益は「152円」です。
18年間の通算利益率は、もう少し良くて「+3.03%」でした。
この18年間には、リーマンショックもあれば、株価の高騰もありました。それらのプラスマイナスをならしてみると、「3%」のプラスというわけです。
株に投資と聞いた時点で、「さすがに簡単に2倍にはならないにしても、20%とか30%ぐらいは増えるでしょう」と考える人が多いのですが、現実はもう1桁少ない利益しか出ません。
それでもGPIFの投資は成功している
ここまで見てきたように、GPIFの18年間の投資は、3年に1回は負けています。
しかも、利回りは通算で3%がやっとです。
では、GPIFの投資は失敗しているのでしょうか。決して、そうとは言えません。
実際には、18年間で「65兆8千億円」のプラスとなっています。
たとえ投資の年利が3%でも、長い期間に渡って投資をし続けていれば、利息が利息を生むために、それなりの結果を得ることができるのです。
株式の投資信託に投資をするときは、「何回かに1回は必ず負ける」「一時、すごく儲かっても、長期間ならすと年率は数%ぐらいに落ち着く」という気持ちで行ないましょう。
連戦連勝である必要はありませんし、高い年率が必要というわけでもありません。
長期間に渡って、一定の金額をきちんと投資していくということが大切なのです。
現状では、銀行預金などの金利が低いために、投資をしないと3%の年率が確保できません。
それでもリスクを背負いたくない場合は、投資をするかどうかという点から考え直しましょう。