年金を繰上げ受給したときの金額が増える改正案
繰上げ受給の改正案を提案
現在、老齢年金の受給開始は、「65歳」からですが、希望すれば「60歳」から繰り上げて受給することができます。
ただし、繰り上げ受給をすると、年金を受取る期間が長くなる分、一定の割合で年金が減額されます。
繰り上げ受給の減額率は、「1カ月当たり0.5%」と定められています。
例えば、「60歳」から繰り上げ受給すると、0.5%×12カ月×5年で「30%」の減額となります。
2019年10月の厚労省の社会保障審議会で、この、繰り上げ受給に伴う減額を小さくする改正案が提案されました。
改正案通りになれば、繰上げ受給の魅力が増す可能性があります。
さっそく、改正案の内容を紹介しましょう。
1カ月当たりの減額率を0.1%小さくする
今回提案された、改正案を一言で言うと「繰り上げ受給に伴う減額を小さくする」です。
具体的には、これまで「1カ月当たり0.5%」だった減額率を、「1カ月当たり0.4%」とします。
「60歳」からの繰り上げ受給で比べると、現行制度の「30%の減額」が、改正案では「24%の減額」になります。
つまり、60歳で受け取る年金の金額が6%も増えるのです。
60歳からの受給で「3,900円」も増える
実際に、どれぐらい年金額が増えるのか計算してみましょう。
2019年現在、国民年金の老齢基礎年金の満額は、「1カ月に65,008円」です。
これを、「60歳」から繰り上げ受給すると、現行制度では「45,506円」まで減ります。
しかし、改正案では「49,406円」になるので、1カ月当たりで3,900円も増えることになります。
繰上げ受給のデメリットも確認を
現在、国民年金を受け取る人の13%が、「繰上げ受給」を選択しています。
多少の減額はあっても、早く現金を受取ることを選択する人が少なくないのです。
今回の提案が実現すれば、「繰上げ受給」を選択する人は、さらに増えるでしょう。
しかし、それは、65歳まで働いている現状を、70歳以上まで働くように誘導するという、現在の厚労省の方針に反したものです。
70歳以上まで働く環境を作ろうとしている中で、早くから年金生活に入る可能性が増えるような改正案が通るかどうかはわかりません。
いずれにしても、改正案は提案されたばかりの段階であり、法律として成立するのは、少なくとも来年以降になります。来年にかけての審議の状況を見守りましょう。
なお、繰上げ受給には「減額」以外にも、3つのデメリットがあります。
- 障害基礎年金を請求することができなくなる
- 寡婦年金が受給されない。既に寡婦年金を受給していても権利がなくなる
- 65歳になるまで遺族厚生年金/遺族共済年金が併給できない
繰上げ受給を考えるときは、自分や家族の状況も含めて検討してください。