国民生活センターが「外貨建て保険」の危険性を警告
「外貨建て保険」について相談が殺到
国民生活センターでは、「外貨建て保険」についての相談が増加していると警告しています。
2019年の相談件数は483件で、2014年の144件に比べて3倍以上に増えています。
また、「外貨建て保険」の平均契約額は1千万円前後と大きく、大きな被害をもたらす原因となっています。
外貨建て保険の特徴
「外貨建て保険」とは、どのような保険商品なのでしょうか。
私達が加入する生命保険の多くは「円建て保険」で、保険料を日本円で払い込み、保険金も日本円で受け取ります。
しかし、「外貨建て保険」では、保険料を外貨で払い込み、保険金を外貨で受け取ります。
円と外貨の間で交換を行なう際には「為替手数料」という手数料が発生します。
円と外貨の間で交換を行なうだけでも、一定の損失が発生するのです。
さらに、「外貨建て保険」は、為替レートが変わると、その影響を受けてしまいます。
例えば、円安になれば保険金の受取額が増えますが、円高になると保険金の受取額が減ります。
円高が進んだ場合、払い込んだ保険料よりも、受け取る保険金が少なくなるので、「元本割れ」の状態になります。
保険は安全で元本割れしないと思っている人にとって、「外貨建て保険」は想像外の仕組みであり、危険な保険なのです。
元本保証と言われたが、元本保証ではなかった例も
寄せられている相談の例を見てみましょう。
金融機関の職員が自宅に訪問し、預けているだけでは増えないと金融商品を勧められた。
投資は絶対しないと夫婦で決めていたので、必死に断った。
しかし職員は何回も自宅に訪れ熱心に勧めてきて、最後は上司まで電話をかけてくるので、仕方なく話を聞いた。
預けていた定期預金500万円は満期前だったが、それを豪ドル建ての商品に変更したほうがよいと勧められた。
何回も元本保証だと繰り返され、職員があまりにも熱心だったこともあり、押しに負けて仕方なく契約をした。電話で上司からも元本保証であるという説明を受けた。
契約後に証書が送付されたが、保険会社との豪ドル建て個人年金保険契約になっており、不安になって確認すると、金融機関が代理店になっていると分かった。
最近になり、契約内容を確認するため保険会社に問合せると、元本保証はないと言われ、80万円ほどの損失が出ていた。元本保証と信じて契約したので何とかしてほしい。(70代女性)
このように、虚偽の商品説明を受けて、被害を受ける例も少なくありません。
「外貨建て保険」が危ない商品である上に、売っている担当者に悪意があっては、被害の相談が増えるのも当然でしょう。
クーリング・オフできても損が出る場合もある
国民生活センターでは、「外貨建て保険」の販売において、さまざま問題があると指摘しています。
例えば、「外貨建て生命保険」の危険性が理解されていないことであり、商品の危険性を判断できない高齢者を対象に販売している例が多いことです。
また、幸いにしてクーリング・オフによって解約できても、外貨と円を交換する際に発生する為替手数料や、為替の動向によって損失が発生してしまう可能性があります。
また、銀行が代理店になっている場合、「銀行が扱っているから大丈夫」という思い込みが危険を招きます。
基本的には、「外貨建て保険」という商品の内容が理解できないのであれば、近寄らないようにしてください。
資格制度を作っても危険性は変わらない
生命保険業界の団体である生命保険協会は、国民生活センターなどの指摘を受けて、「外貨建保険販売資格試験」という制度を創設することを明らかにしています。
これは、外貨建保険を販売する募集人に、法令遵守などの教育を行ない、資格取得者を登録するものです。
しかし、販売にあたる側の体制が変わっても、「外貨建て保険」の危険性が減るわけではありません。
「元本が保証されない」ことや、「為替の動向によって損をする可能性がある」という危険性は、そのままなのです。
為替や保険についての知識があり、自己責任で判断できる人以外は「外貨建て保険」は購入しないようにしてください。