総務省と泉佐野市の裁判が決着。泉佐野市がふるさと納税に復帰
ふるさと納税をめぐる裁判が決着
ふるさと納税をめぐって、総務省と大阪府泉佐野市が争っていた裁判が6月末に決着しました。
この裁判は、ふるさと納税が新制度に移行する際に、総務省が泉佐野市らを指定から外したことの是非を争ったものです。
判決は、総務省の決定を取り消すもので、泉佐野市の勝訴です。
総務省は、この判決を受けて、大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町を、ふるさと納税制度の対象団体として指定しました。
昨年からずっと続いていた、ふるさと納税に関する総務省と地方自治体の争いがようやく決着したと言えるでしょう。
駆け込みで大金を集めた泉佐野市
ふるさと納税をめぐっては、次のような経緯がありました。
- 地方自治体間の競争が激しくなり、返礼品に充てる割合を高めたり、換金性の高い返礼品が登場。
- 総務省が、「寄付額の3割を超える返礼品」と「換金性の高い返礼品」を止めるように通知。
- 多くの自治体は、通知に従ったが、泉佐野市を始めとする自治体は通知を無視。
- 総務省がふるさと納税に関する法律を改正。返礼品の割合を3割以下とすることなどを義務付け。
- 泉佐野市が、改正された法律の施行までの期間、Amazonギフト券などを返礼品としたキャンペーンを行ない、約498億円の寄付金を集める。
- 総務省が改正された地方税法の施行時に、泉佐野市などを指定から外す
- 泉佐野市が、法律の施行前の禁止されていなかった時点での行動によって、指定から外されたのは違法であるとして提訴。
つまり、ふるさと納税の現状を許容できない総務省が、通知や地方税法の改正などで、地方自治体の行動を制限しようとしたのです。
それに対して、泉佐野市は、改正された法律が施行されて、返礼品の内容が制限される前に、駆け込み的にキャンペーンを行ない、巨額の寄付金を集めました。
総務省は、それを理由に、泉佐野市を指定から外しました。
これによって、泉佐野市への寄付はふるさと納税として扱われなくなったのです。
地方自治体への「通知」は「命令」ではありません。泉佐野市が従わなくても、それを根拠として指定から外すことには無理があります。
いわば、適法であった行動を、後からできた法律で評価する「後出しジャンケン」と言えるでしょう。
泉佐野市は、これを不服として裁判所に提訴し、最高裁まで争われました。
最高裁の判決では、法律が施行されて禁止される前の行動は適法の範囲であって、それによってふるさと納税の指定から外すことは適法ではないと判断されました。
他の自治体も「ふるさと納税」に復帰
今回の判決を受けて、総務省は、ふるさと納税制度の指定から外していた自治体に対して、復帰を認めました。
泉佐野市以外にも、「和歌山県高野町」と「佐賀県みやき町」が復帰しています。
ただし、地場産品以外の返礼品を扱っていたことを原因としている「静岡県小山町」については、申請があれば再度検討するとしています。
「節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」
最高裁の判決は、泉佐野市の勝訴となりました。
しかし、判決では、泉佐野市のとった行動も批判されています。
判決文では、次のように述べられています。
確かに、泉佐野市は、多くの地方団体が自律的に返礼品の見直しを進める中で、返礼割合が高くかつ地場産品以外のものを含む返礼品の提供を続けた上、本件改正法が成立した後も、本件改正規定の施行直前までの予定で、キャンペーンと称し、従来の返礼品に加えてアマゾンギフト券を交付するとして、返礼品を強調した寄附金の募集をエスカレートさせたものであり、このような本件不指定に至るまでの同市の返礼品の提供の態様は、社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ないものである。
「不指定に至るまでの同市の返礼品の提供の態様は、社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ないものである」という言葉には、泉佐野市への批判が込められています。
さらに、裁判官の一人は、判決文の中で補足意見として次のように述べています。
上告人(注:泉佐野市)の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚えたところがあり、その考え方を以下のとおり補足しておきたい。
居心地の悪さの原因は、泉佐野市が、殊更に返礼品を強調する態様の寄附金の募集を、総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果、集中的に多額の寄附金を受領していたことにある。
特に、同市が本件改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには、眉をひそめざるを得ない。
このように、泉佐野市が勝訴したと言っても、その全面的に行動が肯定されたわけではありません。それが判決に対する後味の悪さにつながっています。
今回の判決により、ふるさと納税をめぐる混乱は、一応の決着を見ました。
しかし、一連の騒ぎは「ふるさと納税」に対して、ネガティブな印象を残してしまいました。
総務省および泉佐野市を始めとする地方自治体が、新しい制度の中で、ふるさと納税をどのように運営していくのか、注目されるところです。