来年4月に導入される「70歳雇用延長制度」を前に、働き続けたい年齢の平均は「72.8歳」
55歳以上の2,500人にアンケート
野村総研グループのNRI社会情報システムが、「70歳雇用延長制度」についてのアンケート結果を公開しています。
2020年3月に行なわれたインターネット調査には、全国の55歳~79歳の男女2,500人が回答しています。
7つに増える働き方の選択肢
アンケートの結果を見る前に「70歳雇用延長制度」について、おさらいしておきましょう。
「70歳雇用延長制度」は、高年齢者雇用安定法(高齢法)の改正により、2021年4月より適用されます。
現在の「65歳雇用延長制度」は、企業に次の3つの選択肢のいずれかを迫っています。
- 定年廃止
- 定年の65歳以上への引き上げ
- 希望する社員全員に65歳までの継続雇用制度の導入
「70歳雇用延長制度」では、この3つの選択肢の年齢が「70歳」まで引き上げられます。
ただし、単に70歳まで働けるようになるというだけではありません。
これまでの3つの選択肢に加えて、65歳から70歳までの継続雇用の選択肢として、次の4つが加わります。
- 子会社や他企業への再就職の斡旋
- 個人事業主となった社員への業務委託
- 社員が起業した会社への業務委託
- NPOの社会貢献活動への参加
つまり、雇用先がずっと面倒を見てくれるというよりも、新しい働き方ができるように背中を押すような制度に変わると思えば良いでしょう。
「内容をよく知っている」は2割に留まる
アンケートでは、「70歳雇用延長制度」について、「内容をよく知っている」という人は全体の2割しかいませんでした。
一番多い回答は、「名前を聞いたことがある」でした。
働き方の選択肢が増えることなど、内容の周知は、まだ、これからと言えるでしょう。
「良い制度」と思う人は半分
「70歳雇用延長制度」に対して、「良い」と評価している人は53.9%でした。
つまり、回答者の半分に留まっています。
特に、実際に「70歳雇用延長制度」の対象となる55歳~64歳の年齢層では、「良い」と評価する人は4割に留まっています。
内容の理解が進んでいないためか、まだ評価が定まっていない印象です。
ほぼ半分は「70歳まで働く」
「70歳雇用延長制度」の適用対象となる正社員層を対象に、「制度を利用して70歳まで働くか」と聞いています。
「70歳まで(以降も)働く」と「多分、70歳まで働く」を合わせると、ほぼ半数の人が70歳まで働くつもりです。
また、回答者の年齢が高くなるほど、70歳まで働きたいという人が多くなります。
自分の年齢が高くなり、仕事が終わる時期が見えて来ると、もっと長く働き続けたいという気持ちになるのでしょう。
働きたい年齢の平均は「72.8歳」
実際に働き続けたい年齢の平均は「72.8歳」でした。
さらに、「健康である限り」「80歳くらい」「75歳くらい」と、70歳を越えて働きたいという人はが6割を越えます。
70歳を過ぎても働き続けたいという希望を持っている人は多いのです。
60代で働いている自分をイメージしてみよう
2021年4月から導入される「70歳雇用延長制度」は、定年が70歳まで伸びるのではありません。
むしろ、高齢期に入ってからの働き方の選択肢が増えることが特徴となっています。
現在は、60歳の定年以降は、65歳まで再雇用制度で働くという制度が主流です。
しかし、「70歳雇用延長制度」が始まれば、少しずつ変化が現れるでしょう。
例えば、会社から「業務委託」されて仕事をすることで、「兼業」や「起業」もやりやすくなります。
自分が働くことに何を求めているのか、特に60代以降に、どこで、どのように働きたいのか、イメージしておきましょう。