60歳の定年を迎えて「退職」を選ぶ人が15%、「継続雇用」が85%
65歳まで働ける制度はできている
サラリーマンの定年前後の働き方については、「高年齢者雇用安定法」という法律が基本になります。
高年齢者雇用安定法では、“65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置”を求めています。
つまり、正社員の人は、65歳までは働けるように制度が準備されています。
厚労省がまとめた、2019年6月時点での報告をもとにして、定年前後の働き方の選択を見てみましょう。
99.8%の企業が制度を導入済み
厚労省による、2019年の集計には、16万1,378社が報告を寄せています。
高年齢者雇用安定法が求めている、「高年齢者の雇用を確保するための措置」を導入している企業は、このうちの99.8%でした。
ほぼ、すべての企業で、65歳まで働くための制度が用意されていることになります。
65歳まで安心して働ける企業は2割しかない
しかし、「高年齢者雇用安定法があるから、65歳までは何も考えなくて良い」というわけには行きません。
なぜなら、65歳まで安心して働ける「定年の引上げ」や「定年制の廃止」を導入している企業は、全体の2割ほどしかないからです。
残りの8割弱の企業は、「継続雇用制度」を導入しています。
「継続雇用制度」では60歳に節目がある
多くの企業が導入している「継続雇用制度」とは、どんな制度なのでしょうか。
基本的には、定年は従来どおり「60歳」としています。
そして、それ以降は新たに雇用契約を結びなおすというものです。
定年以降は新たな契約になりますから、身分や給与、働き方などはこれまで通りではありません。
例えば、正社員の身分を離れて、これまでよりも安い給与で、慣れない仕事をしなければならない可能性もゼロではありません。
また、社員には「継続雇用契約をせずに、そのまま定年退職する」という選択もあります。
実際に、集計を見ると、60歳に定年を迎えた人のうち15%は、そのまま定年退職しています。
65歳まで働ける継続雇用制度が用意されていても、全員が同じ会社で働き続けることを選択しているのではありません。
他社に転職したり、自分で起業する人も含めてですが、65歳まで働けるのに、60歳で会社を辞める人が15%もいるということは覚えておいて良いでしょう。
なお、0.2%というわずかな数ですが、「継続雇用を希望したが、雇用されなかった」という人もいます。
現在は、基本的に全員を継続雇用することになっていますが、一部の企業では経過措置として継続雇用の対象者を限定することができます。
ごくわずかですが、そういう可能性もあるということは認識しておきましょう。
年金が貰える「65歳」までは収入を維持しよう
定年前後の働き方を決めるときには、どのような順番で考えれば良いのでしょうか。
まず、自分の年金の支給開始が何歳なのか確認してください。
あなたが、1961年4月2日以降に生まれた男性、または、1966年4月2日以降に生まれた女性であれば、年金の支給開始は「65歳」です。
それまでは年金は当てにできません。
年金の支給開始までは働くつもりでいましょう。
多少、経済的に余裕があっても、60代で生活費に使ってしまっては将来が心配です。
早期退職を考えているならば、年金開始時にどれぐらい貯金があるのか、慎重に検討する必要があります。
60歳で今の会社を辞めるにしても、転職や起業など、収入を得る方法を探しましょう。
「就業規則」で定年の年齢を確認しよう
次に、自社の「就業規則」を見てみましょう。
そして、定年に関する項目を探します。
これで、自分が勤めている会社の定年の年齢が分かります。
65歳定年の企業であれば、「従業員の定年は満65歳とし、65歳に達した年度の末日をもって退職とする」という意味のことが書かれています。
継続雇用制度の場合は「従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については65歳まで継続雇用する」と書かれています。
経過措置をとっている企業の場合は、次のような項目も書かれているはずです。
- 引き続き勤務することを希望している者
- 過去×年間の出勤率が×%以上の者
- 直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
もし、就業規則だけで判断がつかなかったら、会社の総務部門に問い合わせてみましょう。
なお、具体的に継続雇用になった場合は、どのような制度があり、どんな選択ができるのかは、すでに60歳を過ぎた職場の先輩方の働き方を見るとイメージしやすいでしょう。
実際に規則がどのように運営されているのかを知る生き証人ですから、お話を聞いてみる価値はあります。