たった3カ月で「12兆円」の黒字を出した年金運用
17兆円の赤字から、12兆円の黒字へ
私達の年金の積立金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の運用結果が好調です。
2020年4月から6月の四半期で、「12兆4,868億円」の黒字となりました。
その前の3カ月間には17兆円の赤字だっただけに、激しい動きが続いています。
この記事では、黒字の理由と、そのニュースをどう受け止めたら良いのかを紹介します。
3カ月間で12兆円も稼いだ理由
最初に、どうして、12兆円もの黒字ができたのか、理由を見てみましょう。
一言で言えば、GPIFが投資している国内外の株式市場が回復したためです。
GPIFでは、株式市場に投資の50%を充てています。
外国株式に25%、国内株式に25%です。
株式の価格は、常に上下しますが、目標との差が大きくなると調整されます。
この四半期での収益は、外国株式が「7兆5,144億円」、国内株式が「3兆9,689億円」でした。
つまり、株式投資だけで11兆円以上の黒字を稼いたのです。
これに債券投資の黒字分があるので、全体では12兆円を超える黒字となりました。
GPIFの投資は、株式市場の動向の影響を大きく受けてしまうのです。
「赤字」と聞いてもあわてる必要なし
GPIFの運用については、赤字のときは大きく報道されますが、黒字のときはあまり取り上げられません。
「赤字だ! 大変だ!」というニュースの方が、「黒字だった」というニュースよりも人を引きつけるので、報道が偏ってしまうのです。
そのため、日本の年金の運用は、失敗を続けているイメージを持っている人が多いかもしれません。
実際に、GPIFは、2002年のITバブル崩壊でも、2008年のリーマンショックでも大きな赤字を出しています。
しかし、ほとんどの年度では、投資は黒字です。
GPIFが投資の管理を始めた2001年度からの累積では、黒字は「70兆245億円」もあります。
日本の年金の運用は、失敗していないのです。
ですから、「GPIFの運用が赤字だ」という報道に接してもあわてる必要はありません。
それは、四半期とか、長くても1年間という、ごく限られた期間の結果にすぎません。
どうしても不安ならば、GPIFのホームページで、簡単に「累積の収益額」が確認できます。
これが赤字になるまではあわてなくても大丈夫です。
GPIFの資金は、年金の主力ではない
もう一つ、大切なことがあります。
それは、GPIFが運用している資金は、私達が将来受け取る年金の資金の一部でしかありません。
現在、年金の資金源となっているのは、年金保険料と税金(国庫負担)です。
GPIFが貯めている積立金は、将来、年金保険料と税金だけでは足りなくなったときに、充てられる予定です。
しかし、それは支給される年金の1割程度に留まります。
年金の資金源の主力は、あくまでも年金保険料と税金なのです。
極端なことを言えば、GPIFの運用が赤字であろうか黒字であろうが、将来の年金に与える影響は、そんなに大きくはありません。
もちろん、国民から委託された資金ですから、黒字で運用されるべきなのですが、万が一、赤字でも、それが理由で、全く年金が出なくなるという事態は考えなくて良いでしょう。
このような事情があるので、GPIFの赤字や黒字のニュースは、おおげさに受け止める必要はありません。
むしろ、「GPIFの赤字で、将来の年金が危うい」とあおるようなニュースを目にしたら、報じているメディアの信頼性を疑うべきでしょう。