国立感染症研究所が分析した、会社の会議やキャバクラでクラスターが発生した仕組み

[2020/8/18 00:00]

6つのクラスターを分析

国立感染症研究所が、新型コロナウイルスの「クラスター事例集」を公開しています。

クラスターとは、「小規模な患者の集団」を指す用語です。

日本の新型コロナウイルス対策は、発生したクラスターを分析して、人の動きを追跡し、感染した可能性がある人にPCR検査を行なうことを基本としています。

今回公開された「クラスター事例集」には、6つの事例が掲載されています。

この記事では、その中から、身近で、構造が分かりやすい事例を4つ紹介します。

更衣室という限られた空間で感染

公開された6つの事例のうち、一番構造が簡単なのが、「スポーツジム関連クラスター」です。

この事例では、発生した5人の患者のすべてが女性でした。

また、中には、ジムでトレーニングを行なっておらず、岩盤浴やスパだけを利用している人がいました。

そのため、ジムの中心であるトレーニングルーム以外で感染したことになります。

最終的には、全員がジムを利用していた日時から、共通して利用していた場所として「更衣室」が浮かびました。

なお、感染源となった女性は特定されていません。

国立感染症研究所では、「密になりやすい場所では、換気を徹底し、マスクを着用し、長時間の利用を避けるように」とアドバイスしています。

出典:国立感染症研究所

会社の会議が感染の原因に

多くの人に関係するのが、職場の会議が原因となった「職場会議クラスター」です。

会社の会議は、いわゆる「3密」の状態になりやすい行動です。

「3密」とは、新型コロナウイルスに感染しやすい環境を一言で言い表したものです。

  • 密閉空間
    換気の悪い密閉空間
  • 密集場所
    多くの人が密集している
  • 密接場面
    互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行なわれる

会社の会議は、密閉した会議室で、人が集まって、会話を交わす行動ですから、「3密」になりやすいのです。

今回の分析の対象となった「職場会議クラスター」では、「50代の女性職員」が感染源となりました。

下の図の実線の矢印が確定した感染経路、破線の矢印は「複数の経路が推定される場合」を示しています。

まず、会議の場で3人が感染して、会議後4日以内に発症しています。

同じ会議に出席していた人でも、残りの3人は発症が遅かったので、会議室以外の場所で感染した可能性があります。

また、会議に参加していなくても、感染源となった女性から、直接感染した人もいます。

国立感染症研究所では、「会議はWeb会議が望ましいが、対面の会議を行なう場合は、換気の徹底、参加者同士の十分な間隔、マスクの着用が望ましい」としています。

出典:国立感染症研究所

人の移動に沿って感染が広がる

病院や老人ホームなどで発生するのが「院内感染クラスター」です。

下の図では、1つの施設から、別の施設への広がり方に注目してください。

まず、左上の「病棟1」で、患者と2人の看護師が感染しました。

この患者が、感染しているのに気が付かずに退院してしまったため、「介護老人保健施設」に感染が広がりました。

また、看護師からは、共通で使用している休憩室を通して、「病棟2」へと感染が拡大してしまいます。

そして、「病棟2」で感染した患者のリハビリに携わっていた、リハビリ技師も感染してしまったのです。

さらに、「病棟1」の看護師からは、その家族にも感染が広がっています。

この図を見ると、新型コロナウイルスは、人の移動に伴って感染が広がっていくことが分かります。

出典:国立感染症研究所

「接待を伴う飲食店」と人間関係

最後に、「接待を伴う飲食店」のクラスターを紹介しましょう。

「接待を伴う飲食店」は、新型コロナウイルスが広まりやすい場所として指摘され、都道府県による営業自粛の対象となることが多い存在です。

では、どうして「接待を伴う飲食店」は危険とされるのでしょうか。

そのヒントは、夜の街特有の人のつながりにあります。

このクラスターでは、感染源となったのは、右上の「キャバクラA」に勤めている「20代女性店員」でした。

困ったことに、この女性は、新型コロナウイルスの症状が出ているにも関わらず、仕事を休みませんでした。

そのために感染してしまった「40代男性客」は、「スナックC」のオーナーで、自分の店に感染を広めてしまいます。

また、感染源である女性は、こんどは客として「ホストクラブB」に行き、そこの店員にも感染を広めてしまいます。

そのお店が、どんなに新型コロナウイルスの感染予防対策を行なっていても、たった1人がルールを守らないだけで、多くの人に感染を広がってしまうのです。

また、夜の街特有の人の交流の深さや、密閉した空間になりやすいお店の構造から、複数の店に感染が広がりやすいのです。

国立感染症研究所では「店員は、極力3密を減らす工夫をし、検温などの体調管理を行なってください。そして、感染症には早期対応を心がけてください」としています。

出典:国立感染症研究所

「3密」を避けて、マスクや手洗いの習慣を守ろう

ここで紹介した、4つのクラスターを見ると、新型コロナウイルスは、人の動きに沿って感染を広まることが分かります。

一番大事なことは、できるだけ人との接触を避けることです。

少しでも体調が悪かったら、人に会わないようにしましょう。

キャバクラの例のように、体調を無視した無理な行動は、新型コロナウイルスを広める結果となります。

また、スポーツジムの更衣室や、会社の会議室のように、「3密」の状態が続くと、感染しやすいことが分かります。

できるだけ「3密」にならないように行動しましょう。

そして、マスクの着用や、手洗いの励行などの基本動作を守ることが、感染の予防につながるのです。

[シニアガイド編集部]