日本の年金運用が、3カ月で10兆円を超える収益
株式市場の好調さを反映
2020年第3四半期の年金積立金の運用が、10兆円を超える黒字になったことが分かりました。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によれば、2020年10月から12月までの3カ月間で、10兆3,528億円の収益を挙げました。
2020年第3四半期に、収益が挙がった理由について、GPIFの宮園理事長は次のようにコメントしています。
2020年度第3四半期(10月~12月)は、世界的に新型コロナウイルスの感染が再び拡大する一方で、同ウイルスに対するワクチンが普及することへの期待感に加え、景気対策の財政支出や緩和的な金融政策の継続により、国内外の株式市場は上昇しました。
また、為替は対ドルでは円高となった一方、対ユーロでは円安が進行しました。このような結果、10月から12月までの運用資産全体の運用実績はプラス6.29%となりました。
これまでの利益は85兆円
今回の分も含め、年金積立金の運用資産額は「177兆7,030億円」に達しています。
通算の収益額は85兆円を超えており、運用の収益率は年率で3.37%と高いものになっています。
現在の日本の年金制度は、賦課方式と言って、年金保険料として集めたお金を年金支給のため使っています。
そのため、年金積立金が、そのまま将来の年金になるわけではありません。
年金積立金は、将来の年金給付を補うために使われます。年金財源全体のうち、積立金からまかなわれるのは約1割の予定です。
それでも、年金積立金の運用がうまく行っていれば、それだけ将来の年金の支給が確実なものとなります。
なので、今回の10兆円の収益は喜ぶべきニュースなのです。
短期的な赤字の報道に煽られない
年金積立金の運用は、国内外の株式と債券への投資で行なわれています。
そして、株式への投資は、今回のように収益が上がる時期があれば、損失が出る時期もあります。
テレビなどのニュースでは、GPIFに損失が出た場合のみ「xx兆円の赤字」と言って、不安を煽る報道を行なうことが少なくありません。
しかし、重要なのは、短期的な動向ではなく、通算で収益が挙がっているかどうかです。
「年金積立金が巨額赤字」「投資の失敗で年金制度が危険」などの報道を見たときは、それに惑わされずに、通算の収益を見るようにしてください。