消費者庁、「空間除菌」を訴える亜塩素酸スプレーを摘発

[2021/4/21 00:00]
出典:消費者庁

2社のスプレーを摘発

消費者庁は、「空間除菌」の機能を広告などで訴えていたスプレー製品について、景品表示法に基づく措置命令を行ないました。

措置命令を受けたのは、レック株式会社の「ノロウィルバルサン」と、三慶株式会社の「ケア・フォー ノロバリアプラス スプレー」の2製品です。

いずれも「亜塩素酸」を含むスプレーで、店頭やWebサイトで販売されています。

「空間除菌」「99.9%除去」と訴求

消費者庁によれば、これらの製品は、Webサイトなどで、次のような表示を行なっていました。

  • 「クロラス酸で空間除菌 目に見えないウイルス・菌を99.9%除去」
  • 「気になる空間に1平方メートル当たり1回を目安に噴霧してください」
  • 「空間(キッチン・リビング・トイレ・浴室・厨房・調理場・便所・風呂・食堂・ホールなどの狭小空間)のウイルス除去・除菌」

これらの表示は、スプレーを空間に噴霧することで、スプレーに含まれるクロラス酸が空気中で作用し、室内空間に浮遊する菌やウイルスを除去する効果が得られるかのように訴えています。

しかし、消費者庁に提出された資料では、「合理的な根拠を示すものとは認められない」と判定されました。

機能の表示例 出典:消費者庁

厚労省は「空間除菌」を認めていない

今回の2製品は、どこが問題とされたのでしょうか。

スプレーの有効成分であるクロラス酸を含む「亜塩素酸水」は、物品の消毒だけではなく、食品の消毒薬として認められており、肉や果実などに使われています。

つまり、「亜塩素酸水」が問題なのではありません。

「亜塩素酸水」は、厚労省、経産省、消費者庁が共同で制作している「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」というページの「モノに付着したウイルス対策」にも掲載されており、有効性が実証されています。

しかし、同じページの「空気中のウイルス対策」では、「人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません」としており、「空間除菌」を認めていません。

今回の、消費者庁の措置命令も、この見解を踏まえており、「空間除菌」についての表示が問題となりました。

「空間除菌」に対する姿勢が分かれたメーカー

今回の措置命令では、製品を販売しているレックに対して、次のような処置を求めています。

  • 該当する表示は、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  • 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、同様の表示を行わないこと。

しかし、レックはこれを不満として、消費者庁からの措置命令に対する取消訴訟の提起及び執行停止の申立を行なうと、リリースで表明しています。

一方、三慶では、製品情報の用途欄にあった「空間(狭小空間)の除菌」という表示を削除し、「物体の除菌」のみに修正しました。

つまり、レックは「空間除菌」の有効性を訴えて戦う姿勢を示し、三慶は本来の用途である物品の除菌のみを訴える方向へと転換しました。

「空間除菌」を訴えるスプレーや消毒薬の購入を検討する場合は、上記のような厚労省や消費者庁のような見解があることも覚えておいてください。

[シニアガイド編集部]