健康保険組合の8割が赤字。上がり続ける保険料率
「健康保険組合」が危ない
大企業の社員が加入している「健康保険組合」が厳しい状況に置かれています。
「健康保険組合」の団体による調査では、組合の78%が「赤字」でした。
つまり、まともに経営できている「健康保険組合」は、2割ちょっとしかありません。
そのため、「健康保険組合」を解散して、国が支える全国組織の「協会けんぽ」に加入する企業が増えてきています。
この記事では、前半に「健康保険組合」の赤字の様子を、後半に保険料の高騰について紹介します。
78%が赤字の「健康保険組合」
「健康保険組合」の赤字の現状を見てみましょう。
令和3年(2021年)度の予算が明らかになっている健保は1,330組合あります。
そのうち、予算が赤字なのは「1,080」組合でした。
つまり、現在ある「組合健保」のうち、78%が赤字です。
高齢者の医療費に4割も取られている
赤字の「健康保険組合」は、どうしてこんなに増えたのでしょうか。
その理由は、健康保険組合が、高齢者の医療費を負担しているからです。
「健康保険組合」の支出で、最大のものは組合員の医療費に充てられる「保険給付費」で、これが51%を占めています。
これは、健康保険組合の本来の支出ですから、問題ありません。
しかし、次に多いのが、高齢者の医療費に充てられる「後期高齢者医療費」と「前期高齢者納付金」です。
そして、この2つを合わせると、高齢者のための医療費が、支出の44%を占めています。
この2つは、国によって義務付けられている支出で、逃れるすべがありません。
つまり、「健康保険組合」が、本来の役割のために使っている分は5割しかなく、組合員以外の高齢者に使っている分が4割以上もあるのです。
これだけ、高齢者向けにお金を出すように、国によって強制されていては、「健康保険組合」が赤字になるのも無理はありません。
75歳以上の医療を支える後期高齢者医療制度では、医療費の自己負担分は、現役世代の3割より低い1割が基本です。
それが、可能なのは、このように現役世代が払った保険料から、お金が注ぎ込まれているからなのです。
健康保険の料率は「10%」が目安
赤字の保険組合が、取れる手段は限られていますが、もっとも有効なのが「保険料の値上げ」です。
つまり、支出が多い分、収入を増やす方法です。
健康保険組合の保険料率は、どんどん上がっているのです。
実際に「健康保険組合」が徴収する健康保険の保険料率を見てみましょう。
一番多いのは、「9.5~10.0%」ですが、10%を超えている組合も300近くあります。
「10%」というのは、「健康保険組合」のライバルである「協会けんぽ」が標準としている料率です。
「健康保険組合」の最大のメリットは、「社員のために協会けんぽよりも保険料を安くできる」ことです。
それなのに、保険料率が10%を越えてしまっては、「健康保険組合」の存在意義が失われてしまいます。
介護保険の料率は「2%」が目安
「健康保険組合」が管理している保険料率がもう一つあります。
それは、「介護保険」の料率です。
現在、40歳を超えた組合員は、健康保険のほかに「介護保険」の保険料も徴収されます。
「協会けんぽ」の介護保険料の料率は「2%」なので、それが目安となります。
多くの組合が、1.6%~2.0%ですが、86の組合が、2%よりも高い保険料率となっています。
自分の保険料率を調べてみよう
ここまで見てきたように、自分が加入している組合の保険料が、協会けんぽより高いというのは、かなりの問題です。
サラリーマンにとって「健康保険料」も「介護保険料」も、給与から天引きされているお金なので、金額を気にする人は多くありません。
もし、自分の保険料の金額を気にする人がいても、その金額のもととなった「保険料率」まで調べる人は、ほとんどいないでしょう。
しかし、この2つの保険料率は、あなたが所属している健康保険組合の経営が、どれぐらい健全であるかを示す指標です。
それぞれの料率が、「協会けんぽ」を上回っているならば、最悪の場合、健康保険組合が解散してしまう可能性があるのです。
もし、あなたが健康保険組合に加入しているのであれば、ぜひ、その組合のWebサイトで「健康保険」と「介護保険」の保険料率を確認してください。
そして、それが「10%」と「2%」を超えている場合は、加入している健康保険組合が無くなる可能性があると、覚悟しておきましょう。