障害や認知症がある高齢者の生活状況を表す「日常生活自立度」

[2021/5/12 00:00]

介護される人の状態を表す基準

家族を介護するもの同士が、近況を報告し合うときには、「要介護度」が良く使われます。

例えば、「うちは、先日の再認定で、要介護5から要介護4に上がったんですよ」というように、介護を受ける人の状態を、要介護度で表わします。

しかし、同じ介護であっても、介護の理由が「身体の障害」である場合と、「認知症」である場合には、要介護度だけでは比較ができません。

それぞれに適した基準が必要になります。

そういうときによく使われるのが「日常生活自立度」という基準です。

もともとは、厚労省が作ったもので、介護関係の診断書で使われています。

これを覚えておくと、自分の家族がどのような段階にあるかという判定ができ、主治医や看護師と話をするときにも、今の状況が伝えやすくなります。

この記事では、障害高齢者と認知症高齢者に適した2つの「日常生活自立度」を紹介します。

「障害高齢者の日常生活自立度」

「障害高齢者の日常生活自立度」は身体の障害を持っている人が、どれぐらい自立で生活ができているかを表します。

通称を「寝たきり度」と言います。

「障害高齢者の日常生活自立度」は、4段階あり、アルファベットで表現されます。


    (1)ランクJ
    何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出できる。

    (2)ランクA
    屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出できない。

    (3)ランクB
    屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ。

    (4)ランクC
    1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する。

下の表に、より詳しい内容があります。

出典:厚労省

「認知症高齢者の日常生活自立度」

「認知症高齢者の日常生活自立度」は、以前は「痴呆性老人自立度」と呼ばれていました。

古い本を読んでいると、こちらの表現が使われていますが、内容は同じと考えて大丈夫です。

基本は5段階で、ローマ数字とアルファベットで表現されます。


    (1)ランクI
    何らかの痴呆を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。

    (2)ランクII
    日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。

    (3)ランクIII
    日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。

    (4)ランクIV
    日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

    (5)ランクM
    著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。

ただし、IIとIIIについてはaとbに分けられたので、現在では7段階になっています。

詳細は下の図を見てください。

出典:厚労省

次のテーマを探すときにも使える

「日常生活自立度」は、医師などとの会話だけではなく、リハビリなどの目標設定にも使えます。

例えば、現在「障害高齢者の日常生活自立度」が「ランクC」の場合、ひとつ上の「ランクB」に上がるためには、「車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行なう」ことが必要になります。

それがわかっていると、「では、リハビリの目標を車いすへの移乗にしよう」とか「車いすでテーブルへの移動ができるようにして、座り続ける練習をしてみよう」などのテーマが見えてきます。

その上で、ケアマネージャーたちと相談して、リハビリの内容を変えていくのです。

介護を始めた直後は、自分が介護している家族の症状が、いまどのような段階にあるかが分かりません。

「日常生活自立度」を参考にすることで、現状を正しく把握し、次の行動を始めるきっかけにしてください。

[シニアガイド編集部]