在宅介護を続けていくことに不安を感じる作業
在宅介護をあきらめるきっかけ
フルタイムの会社勤めをしながら、在宅の介護を続けるのは、とても大変なことです。
介護に疲れて、働き方を変えるか、施設への入居を考える人が少なくありません。
では、どんな作業に在宅介護の限界を感じて、勤務と介護の両立をあきらめるのでしょう。
厚労省による「在宅介護実態調査」のデータを、三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた結果をもとに紹介します。
2020年7月から8月にかけて行なわれた調査には、14万6,649件の回答が寄せられています。
つらい介護は「認知症状」と「排泄」
「現在の生活を継続していくことに不安を感じる介護」を聞いています。
つまり、在宅介護を続けることが難しいのではないかと悩んでしまうほどつらい作業です。
一番多いのは「認知症状への対応」で、あまり差がなく「夜間の排泄(はいせつ)」と「日中の排泄」が続きます。
やはり、家族の介護をする時に、認知症の症状が出てくると、この状態でいつまで介護が続けられるのだろうかと不安になるのです。
また、夜間の排泄は、家族のオムツ交換がつらい上に、自分の睡眠時間が削られてしまうので、負担が大きいのです。
訪問系のサービスを増やすと、不安が少なくなる
今の生活を続けることが不安になるほどつらい介護について、なにか良い対策はあるのでしょうか。
直接的な解決方法ではありませんが「介護や看護で訪問する人の回数を増やす」という手があります。
例えば、「認知症状への対応」について、訪問サービスを利用していない人は40.2%が不安に感じていますが、訪問回数が月に15回を超える人は28.6%まで下がります。
同じように「夜間の排泄」についても、訪問回数がゼロの人は37.8%が不安としていますが、15回以上の人は29.9%まで下がります。
また、「仕事を問題なく続けていける」と答えている人は、訪問系のサービスを利用している割合が高いというデータもあります。
介護の場に第三者の目が入ることが大切
今回の調査では、訪問系サービスの利用回数が多いと、介護に対する不安が薄まり、仕事を続ける意欲が湧くことが分かりました。
しかし、今回の調査だけでは、どうしてそうなるのかという因果関係までは十分に分かりません。
ただ、訪問系サービスの利用が多いということは、介護や看護にあたる人が家に出入りするということでもあります。
人の目を意識することによって、生活や介護の環境の改善につながりますし、目的を共有する第三者と会話を交わすことで介護者の不安が軽くなるのではないでしょうか。
介護を受ける家族と、介護をする家族だけの閉じた環境を作ってしまうと、不安や怒りが暴走してしまいがちです。
訪問系のサービスを利用し、定期的に第三者が出入りする仕組みを用意することで、在宅介護を続ける環境に向けて一歩踏み出せるのではないでしょうか。
また、第三者と会話することで、施設への入居も含めた、今後の展開についても、適切なアドバイスが得られることでしょう。