在宅介護 Q&A集。「久しぶりに帰省して母に会ったら、同じ話を何度もします」ほか

[2021/8/3 00:00]


この記事は、角川SSCムック『離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』の内容の一部を著者の許可を得て掲載しています。

Q1:久しぶりに帰省して母に会ったら、同じ話を何度もします。

A:かかりつけ医に相談したり、専門医を受診しましょう。

親の様子が少しでもおかしいと感じたら、まずは、かかりつけ医に相談してみましょう。

簡易な検査をしたり、必要に応じて脳の画像検査や神経心理学的検査(下表の3、4)を行なうことができる専門医療機関を紹介してくれます。

異変を感じて親のかかりつけ医へ同行したら、すでに認知症薬を処方されていたというケースもあるようです。

かかりつけ医がいない場合は、日本認知症学会、日本老年精神医学会が認定する認知症専門医がいる医療機関を、学会ホームページなどで検索して受診するといいでしょう。

本人が検査へ行くことを嫌がる場合もありますが、「念のため行ってみよう」「早く検査をすれば治るから」など、前向きなメッセージを伝えながら受診をすすめてみてください。

Q2:認知症になると預金の引き出しが難しくなると聞きました。

A:早めに「予約型代理人」サービスなどを活用しましょう。

高齢になって認知・判断能力がなくなり意思表示ができないと、定期預金の解約などの金融取引が難しくなります。

金融機関は成年後見制度の利用を勧めますが、手続きや費用などの面から多くの人が利用する状況にはありません。

親が元気なうちに定期預金は解約、株式や債券などは売却してなるべく流動性資産にし、現金化しやすい状態にしてもらうのが先決です。

預金については、代理人キャッシュカードと言うサービスもあるので詳細の確認をしてみましょう。

また、三菱UFJフィナンシャル・グループが始めた「予約型代理人」サービス(下図)なども、注目です。

Q3老夫婦二人暮らしなので、買い物や調理が大変そうです。

A:配食などのサービスを使えば自炊がラクになります。

下表は、買い物や調理などをサポートしてくれるサービスの一例です。

自炊が難しくなったときの選択肢として一番にあげられるのは、やはり配食サービス。

最近は選択肢も多く、より便利になっています。

他にも要介護認定を受けている老夫婦二人暮らしなら、介護保険の訪問介護で、調理や買い物を依頼することもできます。

また、子どもがWEBでネットスーパーや総菜の宅配などを注文し、実家へ送るといった方法もあります。

Q4トイレに間に合わず、失敗してしまうことがあります。

A:まずは声かけや尿取りパッドの使用から始めてみましょう。

排せつケアはデリケートな問題です。

多少の失敗はあっても、自尊心を尊重することがポイント。

時間を見計らって声をかけてトイレをうながしたり、尿取りパッドの利用などから始めてみましょう。

Q5:一人暮らしの母が初期の認知症と診断されました。これからどんなことに注意すればいいですか。

A: 想定されるトラブルを知って、対策を考えましょう。

離れて暮らしていると、親の日常生活について詳しく知らない人も多いでしょう。

まずは注意すべきことを見つけるために、1日、1週間、1カ月の大体のスケジュール、通院している病院、親しい友人など親の情報を集めます。

もちろん、これからの暮らし方についての希望を聞くことも重要です。

さらに家の中や敷地内に、高齢の親が生活するにあたって危険な場所がないかも確認し、必要ならリフォームを考えましょう。

また実家を離れて以来、すっかりご無沙汰している近所のお宅へ挨拶に行くと、思わぬ情報が聞けることもあります。

今後のことを考えても、いざというときご近所の方は頼りになりますから円滑な関係を築いておきたいものです。

高齢者が生活する中で、多くの人に当てはまるトラブルが下の表です。

これらの点に注意しながら生活を見守り、対策を考えておくといざというときに慌てずに済みます。

Q6:手すりが必要なのですが、家の構造上、取り付けることができません。

A:介護保険の福祉用具には置き型の手すりがいろいろあります。

高齢者にとって最も避けたいトラブルが転倒。

転んだくらいでと思うかもしれませんが、それが原因で歩けなくなり、認知症が進んでしまうこともあります。

そこで、まず使ってみると便利なのが、介護保険の福祉用具としてレンタルできる手すりです。

置き型なので設置場所を選びませんし、不要になったら返却するだけ。

住宅改修を希望する場合は、専門業者なら工夫してくれるケースもあるので相談してみましょう。

置型の手すりの例。自己負担割合が1割ならば、1カ所、1カ月300~400円程度の負担でレンタルできます。

Q7:ケアマネがリクエストに応えてくれないので替えたいです。

A:所属する事業所か地域包括支援センターに相談しましょう。

依頼する居宅介護支援事業所は替えずに、ケアマネのみを変更したい場合は管理者へ、事業所も変更したい場合は地域包括支援センターへ相談するといいでしょう。

しかし、いずれにしても安易に変更するのは禁物です。

もう一度冷静に考えてから行動に移すようにしましょう。

Q8一人暮らしの母の安否を見守るには、どうすればいいですか。

A:通信環境やAIが進化する今、さまざまな方法があります。

毎日決まった時間に電話をして、親の安否確認をしている人もいるようですが、1日1回では対応が遅れてしまうかもしれません。

しかし現在はさまざまなサービスや、利用しやすいグッズも多く、それらを上手に活用すれば、離れて住んでいても見守ることができます。

下表は、見守りができるサービスやグッズの一例。

近所に頼れる人はいないから見守るだけでなく、いざというときは駆けつけて対応してほしい、と考える人には警備会社のサービスがおすすめです。

まだまだ元気だけれど念のためと考えるなら、人感センサーを搭載したスマート電球や、ドアや窓に取り付けるスマートセンサーが選択肢に。

カメラと違いプライバシーに配慮しながら生活を見守ることができます。

一人暮らしで話し相手がなく寂しがっているようなら、会話ができるロボットもおすすめです。

認知症予防になるとも言われ、一石二鳥の効果が期待できます。

このように、最新のIoT家電やAIを搭載したロボットなど、サポートするグッズはどんどん多様になっています。



酒井富士子(さかい ふじこ)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション(株)回遊舎の代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、様々な書籍や記事などの制作・企画・執筆に携わる。

『株主優待ハンドブック 2021-2022年版』(日本経済新聞出版)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(井戸美枝著、日経BP)、『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(KADOKAWA)などを企画/制作を担当。

[酒井富士子]