1年間で31社が撤退した「新電力」。料金の値上げや倒産に注意
電気が安い「新電力」
2016年の電力自由化にともない、多くの会社が電気の小売りを始めました。
これらの会社を「新電力」と呼びます。
「新電力」は、これまでの電気会社よりも料金が安く、独自の割引やポイント制度なども用意されています。
電気料金を抑えたい節約派の人には、とてもありがたい存在です。
その「新電気」に、いま、逆風が吹いています。
帝国データバンクの資料をもとに、現状を紹介します。
1年間で「31社」が撤退
帝国データバンクによれば、2021年度に倒産した「新電力」は、14社でした。
前年度は2社だったので、一気に7倍に増えました。
さらに、2021年4月の時点で706社あった「新電力」のうち、倒産も含めて、廃業や撤退した会社が「31社」もありました。
市場にあった「新電力」のうち、4%が、たった1年でいなくなってしまったのです。
また、「楽天でんき」のように、営業は続けているものの、新規の契約を受け付けていない会社も増えています。
仕入れ価格の上昇で苦境に
「新電力」が苦境に陥った原因を、帝国データバンクは「電力の調達コストの上昇」と分析しています。
ほとんどの「新電力」は、自分で電力を作らず、卸売市場から購入して、それを小売りしています。
しかし、2021年度の途中から、電力の卸売価格が値上がりしました。
2021年の前半は、電気の卸売価格は1キロワット当たり「10円以下」でした。
それが、12月には「17円」になり、2022年3月には「27円」まで上がったのです。
さらに、ウクライナ危機を受けて、電力の原料となる、原油や液化天然ガス(LNG)の価格が上がっています。
電力の卸売価格は、今後も上がることが確実です。
卸売価格の上昇を、そのまま小売価格に反映できれば良いのですが、安さが売り物の「新電力」にとって、それは難しいことです。
その結果、帝国データバンクによれば、「新電力」の利益は、ピーク時の1割にも届かない状況としています。
契約内容によっては、仕入れの卸売価格が小売価格を上回る「逆ザヤ」になっている状態なのです。
電気が止まることはないが、注意は必要
あなたの家が、もし「新電力」の契約をしているとすれば、これからどうすれば良いでしょうか。
基本的には、現在のままで大丈夫です。
万が一、契約している「新電力」が倒産や撤退をしてしまっても、電気が止まることはありません。
その場合は、旧一般電気事業者の小売部門の事業者が、代わりに電気を届けてくれます。
例えば、東京都内であれば東京電力エナジーパートナーが、「従量電灯B」などの一般的な契約に基づいて、電気を供給してくれます。
「新電力」が倒産しても、明日から急に電気が使えなくなるということはありませんから安心してください。
もちろん、「新電力」独自のポイント制度などの対象にはなりませんが、それは仕方がないでしょう。
ただし、代わりに供給してくれる期間は限られています。
電力会社から指定された期限までに、次の契約先を探して、連絡する必要があります。
もし、新しい「新電力」が契約できない場合でも、旧一般電気事業者の小売部門の事業者は必ず受け付けてくれます。
新しい契約先が見つからず、電気が供給されなくなるということはありません。
また、撤退に至らない場合でも、「新電力」からのお知らせには注意してください。
電力会社からの通知は、その会社の状況が分かる重要な情報です。
「契約内容の見直し」、つまり値上げなどの場合もありますから、必ず内容を確認してください。
このようなリスクがあるということを理解した上で、「新電力」ならではの低価格やサービスを利用しましょう。