人口減の東京から出ていったのは「子育て世代」、行き先は隣の県
東京都の人口の流れを検証する
投資用不動産を扱うグローバル・リンク・マネジメントが「2021年の東京の人口動向」についてレポートを公開しています。
このレポートは、政府や都の統計をもとに、東京都の人口の流れを検証したものです。
この記事では、その中から、いくつかのトピックを紹介します。
1年間で「4万8千人」も減った
東京都の人口は、2022年1月時点で「1,398万8129人」でした。
これは前年に比べて、「4万8,592人」も減りました。
東京都の人口の減少は、1996年以来26年ぶりになります。
移住先は隣の県
東京都と、他の県との間の人の動きを見てみましょう。
東京に来た人よりも、東京から出ていった人が多い県は5つしかありません。
- 埼玉県 -1万7,663人
- 神奈川県 -1万3,896人
- 千葉県 -9,375人
- 沖縄県 -397人
- 茨城県 -115人
そして、そのほとんどが、東京都に隣接する「首都圏」の県です。
東京都から移住した人の、ほとんどは、遠く離れた地域に移住したのではなく、すぐ隣の県に住み替えています。
「子育て世代」が出ていった
では、どんな人達が東京都から出ていったのでしょうか。
転出した人を年齢別に見ると「30代」と「40代」が中心です。
「0~14歳」の子供層の転出も増えていることから、東京都から出ていったのは「子育て世代」であることが分かります。
若い女性が東京に集まる傾向は続いている
なお、「30代」と「40代」の転出については、一つ注意すべき点があります。
それは、この年代の転出は、男性が多く、女性は少ないことです。
また、10代後半や20代前半では、女性の転入者が多く、若い女性が東京に集まる傾向が続いています。
つまり、若い女性が東京に集まり、30代や40代になっても、そのまま住み続けるという流れは続いています。
人口が増えた区は3つだけ
東京都の区部(23区)のうち、2021年に人口が増加したのは「中央区」「台東区」「江東区」の3区だけでした。
「中央区」は出産による自然増が、「台東区」と「江東区」は、マンション開発などによる社会増が中心です。
一方、「品川区」「目黒区」「大田区」「世田谷区」「杉並区」「江戸川区」では人口が大幅に減少し、大きく社会減に転じています。
これらの区が属する城南エリアや城西エリアから、東京近郊への転出が進んでいるものと思われます。
マンション価格の高騰も一因
今回のレポートでは、東京からの転出は「子育て世代」が多く、その転出先は隣接する県であることが分かりました。
グローバル・リンク・マネジメントでは、その理由を次のように分析しています。
「首都圏の住宅市場の動向に目を転じると、2021年の新築分譲マンションの平均価格は東京都区部で8,293万円と前年比で7.5%もアップしました。
その一方、東京都下や隣接3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の価格は4,000万円から5,000万円前半でここ数年は横ばいとなっています。
すなわち、区部に住んでいるファミリー層が少し広いスペースを求めると、必然的に郊外に向かうことになるのです。」
つまり、東京からの転出の増加は、新型コロナだけが理由ではなく、都内のマンション価格の高騰も一因となっているのです。