人口減の東京から出ていったのは「子育て世代」、行き先は隣の県

[2022/5/4 00:00]

東京都の人口の流れを検証する

投資用不動産を扱うグローバル・リンク・マネジメントが「2021年の東京の人口動向」についてレポートを公開しています。

このレポートは、政府や都の統計をもとに、東京都の人口の流れを検証したものです。

この記事では、その中から、いくつかのトピックを紹介します。

1年間で「4万8千人」も減った

東京都の人口は、2022年1月時点で「1,398万8129人」でした。

これは前年に比べて、「4万8,592人」も減りました。

東京都の人口の減少は、1996年以来26年ぶりになります。

出典:グローバル・リンク・マネジメント

移住先は隣の県

東京都と、他の県との間の人の動きを見てみましょう。

東京に来た人よりも、東京から出ていった人が多い県は5つしかありません。

  • 埼玉県 -1万7,663人
  • 神奈川県 -1万3,896人
  • 千葉県 -9,375人
  • 沖縄県 -397人
  • 茨城県 -115人

そして、そのほとんどが、東京都に隣接する「首都圏」の県です。

東京都から移住した人の、ほとんどは、遠く離れた地域に移住したのではなく、すぐ隣の県に住み替えています。

出典:グローバル・リンク・マネジメント

「子育て世代」が出ていった

では、どんな人達が東京都から出ていったのでしょうか。

転出した人を年齢別に見ると「30代」と「40代」が中心です。

「0~14歳」の子供層の転出も増えていることから、東京都から出ていったのは「子育て世代」であることが分かります。

出典:グローバル・リンク・マネジメント

若い女性が東京に集まる傾向は続いている

なお、「30代」と「40代」の転出については、一つ注意すべき点があります。

それは、この年代の転出は、男性が多く、女性は少ないことです。

また、10代後半や20代前半では、女性の転入者が多く、若い女性が東京に集まる傾向が続いています。

つまり、若い女性が東京に集まり、30代や40代になっても、そのまま住み続けるという流れは続いています。

人口が増えた区は3つだけ

東京都の区部(23区)のうち、2021年に人口が増加したのは「中央区」「台東区」「江東区」の3区だけでした。

「中央区」は出産による自然増が、「台東区」と「江東区」は、マンション開発などによる社会増が中心です。

一方、「品川区」「目黒区」「大田区」「世田谷区」「杉並区」「江戸川区」では人口が大幅に減少し、大きく社会減に転じています。

これらの区が属する城南エリアや城西エリアから、東京近郊への転出が進んでいるものと思われます。

出典:グローバル・リンク・マネジメント

マンション価格の高騰も一因

今回のレポートでは、東京からの転出は「子育て世代」が多く、その転出先は隣接する県であることが分かりました。

グローバル・リンク・マネジメントでは、その理由を次のように分析しています。

「首都圏の住宅市場の動向に目を転じると、2021年の新築分譲マンションの平均価格は東京都区部で8,293万円と前年比で7.5%もアップしました。

その一方、東京都下や隣接3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の価格は4,000万円から5,000万円前半でここ数年は横ばいとなっています。

すなわち、区部に住んでいるファミリー層が少し広いスペースを求めると、必然的に郊外に向かうことになるのです。」

つまり、東京からの転出の増加は、新型コロナだけが理由ではなく、都内のマンション価格の高騰も一因となっているのです。

[シニアガイド編集部]