企業に学ぶ「電力会社」の選び方。「リスク」と「コスト」が選択のポイント
苦しい状況にある「新電力」
大手10社以外の電力サービス会社を「新電力会社」と言います。
新電力は、全国に10社ある「大手電力会社」に比べて、低価格で電気を供給するため、節約生活を目指すときには欠かせない要素です。
しかし、このところ、燃料価格の高騰などが影響し、新電力は苦しい経営状況にあります。
そのため、新しい契約の募集を停止したり、電気の供給を止める会社も少なくありません。
これから、自宅の電気契約をどうしようか悩んでいる人も少なくないでしょう。
企業に聞いた「電力会社」の選び方
新電力会社は家庭だけではなく、企業にも電気を供給しています。
ここでは、帝国データバンクが行なった調査結果をもとに、電気契約の状況を紹介します。
2022年5月に行なわれたインターネット調査には、1,902社の企業が回答しています。
一般家庭以上にリスクとコストを重視する企業が、何をどう考えて電気の契約を行なっているのかを知ることは、自宅の電気契約を考える際に参考になるでしょう。
「新電力」を選ぶ企業は3割
まず、「利用している電力会社」を聞いています。
「大手電力会社」は65.5%、「新電力会社」は28.8%でした。
新電力会社を選んでいる会社が3割もあるのは多いと言って良いでしょう。
「大手」を選んでいる企業は、今後も「大手」
次に、「今後の電力会社の利用予定」を聞いています。
現在、大手電力会社を利用している企業のうち、「今後も大手電力会社を利用する」企業は96.2%でした。
今、大手電力会社を選んでいる企業の、ほとんどは新電力会社に移行する予定がありません。
その理由としては「新電力会社は一見安価に見えるが、継続性の問題・倒産のリスクなどデメリットが大きいと思う(樹脂加工機械等製造、愛知県)」というコメントが代表的です。
「新電力」を選んでいる企業の2割は移行の予定
次に、現在、新電力会社を選んでいる企業のうち、「今後も新電力会社を選ぶ」企業は70.4%でした。
企業からは、「料金面でのメリットがあるうちは、継続する予定(建設機械器具賃貸、岡山県)」というコメントがありました。
営利を目的とする企業としては、少しでもコストを下げたいという気持ちが強いのです。
一方、現在は新電力会社を選んでいるが、今後は大手電力会社に移行する予定という企業が19.7%あります。
つまり、新電力会社を使っている企業の2割は、大手への移行を考えているのです。
企業からは、「新電力会社を利用していたが、昨今の情勢により4月で同社が事業撤退。5月より大手へ切り替える(肉製品製造、山形県)」というコメントがありました。
新電力会社からの供給が途切れるというリスクが、すでに現実のものとなっているのです。
「リスク」と「コスト」のどちらを優先するか
企業が電力会社を選ぶ理由として、「大手電力会社」ではリスクの低さ、「新電力会社」ではコストの安さが挙がっています。
しかし、「新電力会社」では、事業から撤退するところが出てきており、電気の供給が途切れるリスクが高まっています。
実際に、現在は「新電力会社」を選んでいても、「大手電力会社」に移る予定の企業が2割もあります。
ただし、この場合も平坦な道のりではありません。
例えば、「大手電力会社から約5年前に新電力会社へ切り替えた。2021年3月に新電力会社より供給停止の連絡があり、他の電力会社との契約を検討したが、すべて契約を拒否された。現在は大手電力会社の最終保障供給でまかなっている(愛知県)」という実例があります。
「最終保障供給」というのは、どうしても電力会社と契約できない場合、大手電力会社が1年契約で電気を供給してくれるというものです。
ただし、電気のコストは割高ですし、再契約が可能とはいえ、1年ごとの契約という不安定な状況に追い込まれます。
今回見た調査結果は、企業を対象としたものですが、電力会社の選び方は、個人の場合も同様です。
「リスク」と「コスト」のどちらを優先するのか、よく考えてください。
そして、電力会社を変えるならば、できるだけ早く行動することをおすすめします。