退職した中高年は「引きこもり」予備軍。同居家族がいても「外出」と「会話」が足りない
「引きこもり」の手前にいる中高年へのアンケート
「引きこもり」と言うと、比較的若い年齢の人を想像しがちです。
しかし、中高年においても、「外出をしない」「家族以外とは会話をしない」という生活を送っている人は少なくありません。
この記事では、内閣府が行なった引きこもりの調査結果から、「40歳~69歳」の部分を抜き出して紹介します。
この調査では「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」というレベルの人も含めて「広義の引きこもり」と定義し、その実態を聞いています。
2022年11月に行われた郵送の調査は、40歳~69歳の男女を対象としています。
回答者は5,214人で、そのうちの155人が「広義の引きこもり」と判断されました。
この記事では、これらの人を「対象者」と呼びます。
家族以外と会話がない人が多い
「広義の引きこもり」の条件の1つに「家族以外との会話」があります。
過去6カ月間に、家族以外の人と会話の経験がある人は、半分に届きません。
男性が6割、女性が4割
対象者のうち、「男性」は6割、「女性」は4割でした。
過去の引きこもり調査では、男性の比率が極端に高いものが多いのですが、今回の調査では女性が多めになっています。
「60代」が6割を超える
対象者の割合は、年齢が高くなるほど多くなっています。
特に「60代後半」は多く、4割以上を占めています。
「60代前半」を含めた「60代」では、全体の6割を超えます。
きっかけは「退職」
「現在のような外出状況になった理由」で一番多いのは「退職」でした。
「退職」が理由で外出が減った人は4割を超えています。
つまり、「60代」の対象者が多い理由は、定年退職を迎えた人が多いからでしょう。
そして、「新型コロナウイルス感染症」が2割で続きます。
生計を支えているのは「本人」の「年金」
対象者の家庭の生計を支えている人は、「本人」が一番多く、半分以上を占めています。
また、主な収入源では「年金」が一番多く、こちらも半分を超えています。
既婚者が多く、家族と同居している
最後に家庭の状況を見てみましょう。
高齢の引きこもりというと、未婚か離婚を経験した単身者というイメージが強いのですが、今回の調査結果は、それを裏切っています。
同居している家族を見ると、半分以上の人が「配偶者」と同居しています。
一方、単身者は4人に1人しかいません。
「外出」と「会話」を心がけて生活を
調査結果を見ていると、中高年者が、外出の機会や家族以外との会話を失うきっかけとして「退職」が大きく影響していることが分かります。
家族と同居している人が多く、生活は年金によって支えられているので、客観的な状況は悪くありません。
しかし、仕事や会社から引き離された上に、新型コロナの影響もあって、孤立しやすい状況になっているのです。
「広義の引きこもり」は、過去3年以内に現在の外出状況に陥っています。
油断していると、意外と早く孤独で孤立した生活となって、社会との接点を失ってしまうことが分かります。
退職を控えている人や退職直後の人は、会社勤めの習慣が残っているうちに、「外出をすること」と「家族以外との人と会話すること」を心がけてください。