新型コロナ対策の「雇用調整助成金」を不正受給した企業は「516社」。1社で10億円を超える例も

[2023/7/2 00:00]

コロナ対策の補助金を不正受給

新型コロナウイルス感染症による影響を補うために、さまざまな補助金が用意されました。

その一つが「雇用調整助成金」です。

この補助金は、企業を対象としたもので、新型コロナによって従業員が休業した際に、休業手当を支援するものでした。

調査会社の東京商工リサーチによれば、「雇用調整助成金」を不正に受給したとして公表された企業が全国で「516社」に及びました。

不正受給金額は総額で「163億2,020万円」に上ります。

新型コロナ関係の補助金では、不正受給の摘発が続いていますが、「雇用調整助成金」も例外ではありませんでした。

不正受給の手口

実際に「雇用調整助成金」の不正受給は、どのような手口で行なわれたのでしょうか。

ここでは、4つの代表的な手口を紹介します。

  • 架空休業1
    実際には出勤またはテレワークをしているにも関わらず、休業したものとして休業日数や休業時間を水増しして申請する。
  • 架空休業2
    出勤日にタイムカードを打刻しないよう従業員に指示し、出勤簿などの法定帳簿を書き換えて申請する。
  • 架空雇用
    退職した従業員を現在も雇用しているように装う、あるいは架空の人物を雇用しているよう装い、休業したとして申請する。
  • 架空休業手当
    実際には従業員に所要の休業手当を支払っていないが、支払ったとして申請する。

不正受給は大都市圏に集中

不正受給をした企業を都道府県別に見てみましょう。

上位10件は次の通りです。

  • 東京都 68件
  • 愛知県 61件
  • 大阪府 57件
  • 神奈川県 53件
  • 広島県 28件
  • 千葉県 21件
  • 埼玉県 17件
  • 福岡県 16件
  • 京都府 13件
  • 大分県 13件

東京、名古屋、大阪の3大都市を中心に、企業数が多い大都市圏が多くなっています。

「飲食業」や「宿泊業」など対面サービス業が多い

不正受給をした会社を産業別に見てみましょう。

一番多いのは「サービス業」で、全体の42.1%を占めています。

次いで、「建設業」が12.3%、「製造業」が10.4%で続きます。

「サービス業」の内訳では、「飲食業」や「宿泊業」など、新型コロナで影響を受けた対面サービス業が多くなっています。

1社で10億円以上を不正受給した「水戸京成百貨店」

「雇用調整助成金」を不正受給した企業の代表は「水戸京成百貨店」でしょう。

水戸京成百貨店は1社で「10億7,383万円」もの不正受給をしていました。

あまりに不正の規模が大きく、代表取締役社長と取締役総務部長の交代に至りました。

しかし、不正受給企業全体を見渡すと、売上高が1億円未満で、会社設立から10年未満の小さくて若い企業が多くなっています。

新型コロナ対策の補助金は、実施を急ぐために、申請に対する審査が緩くなっていました。

そこにつけこもうとする小規模な企業が多かったのです。

出典:東京商工リサーチ

不正受給のペナルティは重い

「雇用調整助成金」の不正受給がバレると、助成金の返済では済まずに、違約金と延滞金が課せられます。

また、不正金額が100万円以上の場合は社名が公表されるため、信用面でも打撃を受けます。

さらに、悪質と判断された場合には、詐欺罪で告発される可能性もあります。

実際に、「大津漁業協同組合」の担当者に対して、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決が出た実例もあります。

この事例では、タイムカードをシュレッダーにかけるという悪質な手口でした。

しかし、実際に受け取った補助金が「183万円」だったことを考えると、重いペナルティと言えるでしょう。

新型コロナという非常時だったとしても、安易な判断で不正受給を行なうことは大きなリスクが伴うのです。

[シニアガイド編集部]