「楽天でんき」など新電力会社31社が、新規契約の募集を再開。新料金プランに隠された再開できた理由

[2023/7/4 00:00]

新電力会社が新規契約の募集を再開

調査会社の帝国データバンクによれば、2023年3月から6月の間に、新電力会社31社が新規契約の募集を再開しています。

31社の中には、「楽天でんき」のように規模の大きな新電力会社も含まれています。

新電力会社は、電力卸売価格の上昇を受けて、撤退や新規契約の停止をする会社が増えていました。
では、どうして新電力会社は、新規の募集を再開したのでしょう。

その秘密は、新電力会社が採用した料金プランにあります。

「楽天でんき」を例にして、募集再開後の新電力会社のプランを見てみましょう。

出典:帝国データバンク

市場価格と連動する「市場価格調整額」を導入

「楽天でんき」の新規募集は2023年3月30日から再開されました。

そして、4月1日から、新しい電気料金に移行しています。

ここでは、一般家庭向けの契約内容を見てみましょう。

新しいプランの特徴は、「基本料金」がないことです。

例えば、東京電力エリアの「プランS」の場合、基本料金は0円で、従量料金は41.55円/kWhです。
基本料金がないので、電気の使用量が少なければ、東京電力の「従量電灯B」プランよりも安くなる可能性があります。

ただし、これ以外に「市場価格調整額」という費用がかかります。

これは、電力市場の取引価格をもとにして、毎月更新されます。

6月の「市場価格調整額」は「0円/kWh」で、政府の支援金が入るので、実際は「-7円/kWh」になります。

しかし、いつもこうとは限りません。

例えば、「市場価格調整額」が一番高かった1月は「14.43円/kWh」でした。

1カ月の使用量が260kWhとしたら、3,752円もかかってしまいます。

市場価格調整額は、電力市場の取引価格をもとにしているため、何らかの問題で市場の価格が上がると、それがそのまま反映されてしまうのです。

ちなみに、「市場価格調整額」という仕組みは、電力価格の急上昇で問題となった新電力会社グランデータでも使われていました。

やはり、「市場価格調整額」が跳ね上がってしまい、電気の使用量が変わらないのに、電気料金だけが上がるという状態になってしまったのです。

出典:楽天でんき

「市場価格調整額」が導入された理由

新電力会社は、どうして「市場価格調整額」のような仕組みを導入するのでしょうか。

それは、ウクライナ侵攻や電力不足によって、電気の市場価格が上昇してしまったからです。

簡単に言えば、電気を仕入れる価格が上昇したのに、それを売るときの価格に反映できなかったので、新電力会社は赤字になっていました。

いわゆる「逆ザヤ」という状態です。

しかし、新しいプランでは、電力の取引価格が上昇した際に、その差額をそのまま消費者に転嫁する仕組みになっています。

新電力会社から見れば、仕入れ価格が上昇して経営が苦しくなるというリスクを避けることができるのです。

隠れたリスクに注意が必要

新規契約の募集を再開した新電力会社は、さまざまな魅力的なプランやキャンペーンを提供しています。

しかし、その裏では、逆ザヤにならないような料金体系を採用し、電気料金が上がるリスクをユーザーに押し付けているのです。

平穏な状況ならば、大手電力会社よりも安くなりますが、ウクライナ侵攻のような突発的な事件があると、思っていた以上に電気料金が高くなる可能性があります。

現在の電力会社からの乗り換えを検討するときは、契約内容をよく確認し、どんなリスクがあるのかを納得した上で契約してください。

[シニアガイド編集部]