「最低賃金」が最終決定。全国平均は初の千円超え。トップの東京は「1,113円」、最下位の岩手は「893円」

[2023/8/20 00:00]
赤は「最低賃金が千円を超えた県」、青は「最低賃金が900円未満の県」

初めて「千円」を超えた「最低賃金」

2023年度の最低賃金が、すべての都道府県で決定されました。

これが最終決定で、10月1日から順次適用されます。

「最低賃金」制度は、国が賃金の最低限度を定める制度です。

労働者を雇用する会社は、その県の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。

もちろん、パートタイマーやアルバイトも例外ではありません。

今回の改定で、最低賃金の全国の平均は時給で「1,004円」となりました。

最低賃金の平均が千円を超えるのは、これが初めてです。

また、前年に比べて平均額は「43円」上がりました。

この「43円」という上げ幅は、制度開始以来で最大です。

東京都の最低賃金は「1,113円」

では、都道府県ごとの最低賃金を見ていきましょう。

最低賃金が、千円を超えているのは、次の8都府県です。

もっとも高いのは「東京都」で「1,113円」でした。

最低賃金が千円を超えている都府県

  • 東京 1,113円
  • 神奈川 1,112円
  • 大阪 1,064円
  • 埼玉 1,028円
  • 愛知 1,027円
  • 千葉 1,026円
  • 京都 1,008円
  • 兵庫 1,001円

上の地図にもあるように、これらの県は、3大都市圏に属しています。

つまり、都会ほど、人員の募集も激しく、時給が高くなりやすいことが分かります。

「岩手」の最低賃金は、東京の8割しかない

逆に、最低賃金が低い県を見てみましょう。

もっとも低いのは「岩手県」で「893円」でした。

これは東京都の時給より2割も少ない金額です。

以下、東北、四国、九州/沖縄の各地方が多くなっています。

上の地図では薄いブルーで塗られています。

最低賃金が900円未満の県

  • 岩手 893円
  • 徳島 896円
  • 沖縄 896円
  • 秋田 897円
  • 愛媛 897円
  • 高知 897円
  • 宮崎 897円
  • 鹿児島 897円
  • 青森 898円
  • 長崎 898円
  • 熊本 898円

平均より大きく引き上げた理由

最後に、最低賃金を引き上げた幅を見てみましょう。

引き上げ幅は平均で「43円」でしたが、それ以上に引き上げた県は次の通りです。

引き上げ幅が平均より大きい県(カッコ内は引き上げ金額)

  • 島根 904円(47円)
  • 佐賀 900円(47円)
  • 鳥取 900円(46円)
  • 山形 900円(46円)
  • 大分 899円(45円)
  • 青森 898円(45円)
  • 長崎 898円(45円)
  • 熊本 898円(45円)
  • 秋田 897円(44円)
  • 愛媛 897円(44円)
  • 高知 897円(44円)
  • 宮崎 897円(44円)
  • 鹿児島 897円(44円)

資料を見ると、引き上げの幅が大きい県には、いくつかの事情がありそうです。

推測になりますが、4つほど理由を考えて見ました。

  • 最低賃金を「900円台」に載せたかった(「島根」「佐賀」「鳥取」など)
  • 隣接するライバル県と同じ金額にしたかった(「山形」は大きく値上げしたので、「福島」と同じ900円になった)
  • 周囲の県と横並びでなく、差をつけたかった(「佐賀」は、「福岡」を除く九州では唯一900円台になった)
  • 「最低賃金が全国で一番安い県」は避けたかった(昨年度最下位だった「青森」など10県)

最低賃金を上げることは、その地域の会社や産業にとって簡単なことではありません。

しかし、隣接する県やライバルである県よりも低いと、人を引き付けることができません。

各県とも知恵を絞って、最低賃金を引き上げる裁量が行なわれているのです。

典型的なのが、今回、最低賃金が全国で一番安い県となった「岩手」のケースでしょう。

「岩手」の前年度の最低賃金は「854円」でした。

これは、そんなに悪い順位ではなく、一番安い「853円」の県が、下に10個もありました。

しかし、今年度は「853円」だった県が、すべて40円以上値上げしたのに対して、「岩手」は「39円」しか上げなかったので最下位となってしまったのです。

他県の関係者が、最下位だけは避けるように最低賃金の金額を積み上げるべく交渉しているときに、「岩手」は素直に手続きを進めてしまい、「最低賃金が全国で一番安い県」となってしまったのです。

付録:2023年度 最低賃金一覧表

  • 北海道 960円
  • 青森 898円
  • 岩手 893円
  • 宮城 923円
  • 秋田 897円
  • 山形 900円
  • 福島 900円
  • 茨城 953円
  • 栃木 954円
  • 群馬 935円
  • 埼玉 1,028円
  • 千葉 1,026円
  • 東京 1,113円
  • 神奈川 1,112円
  • 新潟 931円
  • 富山 948円
  • 石川 933円
  • 福井 931円
  • 山梨 938円
  • 長野 948円
  • 岐阜 950円
  • 静岡 984円
  • 愛知 1,027円
  • 三重 973円
  • 滋賀 967円
  • 京都 1,008円
  • 大阪 1,064円
  • 兵庫 1,001円
  • 奈良 936円
  • 和歌山 929円
  • 鳥取 900円
  • 島根 904円
  • 岡山 932円
  • 広島 970円
  • 山口 928円
  • 徳島 896円
  • 香川 918円
  • 愛媛 897円
  • 高知 897円
  • 福岡 941円
  • 佐賀 900円
  • 長崎 898円
  • 熊本 898円
  • 大分 899円
  • 宮崎 897円
  • 鹿児島 897円
  • 沖縄 896円
[シニアガイド編集部]