自分の代わりに「退職」を伝えてくれる「退職代行サービス」。利用時はサービスの限界に注意が必要
「退職の意志」を会社に伝えてくれるサービス
「今の会社を辞めたいけれど、自分では言い出せない」というときに、数万円程度の料金で、本人に代わって退職の意志を伝えてくれる「退職代行」という業者が、ここ数年増えています。
「退職代行」とは、労働者本人に代わって、代行業者や弁護士が会社に退職の意思を伝えるサービスです。
ここでは、エン・ジャパンが行なったインターネット調査をもとに、「退職代行」の利用状況を紹介します。
2023年8月から9月にかけて、転職サイト「エン転職」で行なわれた調査には、7,749人が回答しています。
7割以上の人が存在を知っている
まず、「退職代行」というサービスを知っているかどうかを聞いています。
「退職代行を知っている」人は72%でした。
かなり多くの人がそういうサービスがあることを知っています。
実際に利用したことがあるのは2%
次に、「退職代行」を利用したことがあるかどうかを聞いています。
「自分が利用したことがある」人は2%でした。
また、「同僚や知人が利用したことがある」人が5%います。
利用した理由は「退職を言い出しにくかったから」
「退職代行」を使ったことがある人に、利用した理由を聞いています。
一番多いのは「退職を言い出しにくかったから」でした。
以下、「すぐに退職したかったから」「人間関係が悪かったから」、そして「パワハラやセクハラの被害に遭っていたから」が続きます。
追い詰められて、「退職代行」に頼る人が多い
では、実際に「退職代行」サービスを利用したのエピソードを見てみましょう。
まず、自分自身が利用した人のエピソードです。
- 連日の残業で体調を崩し、精神的にも不安定だったので、救いを求めて利用した。(27歳男性)
- 何度も退職希望について伝えたが辞めさせてもらえず、やむを得ず代行を使った。(32歳女性)
これを見ると、かなり追い詰められた状況で、退職代行サービスに頼っていることが分かります。
しかし、そういう人ばかりではありません。
- 人間関係が悪かったのと、仕事の内容が合わなくて辞めたかった。退職したい意思を認めてもらえないような気がしたので、退職代行を使った。(24歳男性)
のように、自分で言い出すことを避けるために「退職代行」を頼んだ人もいます。
円満な退職よりもストレスは大きい
「退職代行」による退職は、円満な退職に比べると周囲にストレスを与えます。
知人や同僚が利用した人のエピソードを見てみましょう。
- 同僚が退職代行で退職した。ロッカーの荷物がそのままで片付けや郵送、保険証の返却等、担当の方が忙しそうだった印象が残っている。(26歳男性)
- 職場の同僚が利用し、会社側が頭を抱えてしまっていた。本人と直接会話ができないため、何が問題だったかが分からず、改善できずにいるように見えた。(27歳男性)
「退職代行」の利用によって、退職者本人と直接やりとりできず、退職後の処理に支障をきたしている様子がうかがえます。
サービスを提供している主体によっては対応でないこともある
最後に、「退職代行」サービスの限界について紹介しましょう。
一般企業が「退職代行」を業務としている場合、お願いできるのは「退職意志の伝達」の代行です。
簡単に言えば、「退職したい」と、会社に伝えてくれるだけです。
しかし、なんらかの事情で「会社との交渉」が必要になると、法律的な制限があるために、一般企業では代行することができません。
それが可能なのは「弁護士」か「労働組合」が運営している場合に限られます。
さらに、事態がモメて「訴訟」になると、対応できるのは「弁護士」が運営している業者に限られます。
つまり、そのサービスを運営している主体が、「一般企業」なのか「労働組合」なのか「弁護士」なのかによって、対応できる状況に差があるのです。
もし、「退職代行」を利用する場合は、自分が置かれている状況をよく考えて、必要ならば「労働組合」や「弁護士」が主体となっているサービスを選びましょう。