あなたが死んだ時に、遺族に出るお金【国保/国民年金編】
国保や年金から遺族にお金が出る
万が一、自分が死亡した場合、あとに残された遺族のために生命保険に加入している方は多いでしょう。
しかし、生命保険に加入していなくても、国民として加入している公的保険や公的年金からも、遺族に対してお金が出ます。
金額的には限られたものですが、残された遺族の生活を支える一助となりますので、覚えておいて損はありません。
この記事では、主に自営業の人が加入している、国民健康保険(国保)と国民年金について紹介します。
最初に結論をまとめておきましょう。
- 国保/国民年金をきちんと払っていれば、「葬祭費」と「死亡一時金」の合計で、「17万円」ぐらいは一時金が出る
- 18歳未満の子供がいると「遺族基礎年金」が貰える。18歳未満の子供が1人いる家族で年額100万円ぐらい
- 「寡婦年金」は「60歳から65歳までの妻」限定の年金で、年額で58万円ぐらいを上限として貰える
国民健康保険から出る「葬祭費」
最初に「国民健康保険(国保)」から、見ていきましょう。
国保の加入者が死亡し葬儀が行なわれると、葬儀の費用を支払った人に「葬祭費」が支給されます。
支給される金額は、自治体によって異なりますが、だいたい数万円が目安です。
例えば、東京23区内では7万円、東京都下では5万円が主流です。
申請は、葬儀が終了してから、2年以内に行ないます。
申請の際には、マイナンバーの通知カードや印鑑などが必要となります。亡くなった人が住んでいた自治体で必要な書類を確認してください。
自治体によっては、葬儀費用の領収書も必要となります。これは、葬儀が行なわれたことと、費用を誰が出したかを確認するためです。
国民年金の給付は3つのケースがある
次に「国民年金」を見てみましょう。
国民年金の被保険者が亡くなった場合に、遺族が受け取れる給付は3種類あります。
給付される金額が多い順に「遺族基礎年金」「寡婦年金(かふねんきん)」「死亡一時金」の3つです。
そして、貰える金額が大きいものは、必要とされる条件も厳しくなります。
なお、年金制度には例外となる条項が多いのですが、ここでは分かりやすさを優先して、一般的な場合のみを紹介します。実際に支給を受ける際は、自治体の窓口で受給条件を確認してください。
「遺族基礎年金」
被保険者の「子のある配偶者」または「子」に支給されます。
「子がない配偶者」には支給されません。
また、ここで言う「子」は18歳未満のみが対象で、18歳になると支給が止まります。
2017年10月現在の年間支給額は、779,300円+子の加算額です。
子の加算額は第一子と第二子が224,300円、第三子以降が各74,800円です。
だいたい「配偶者と子供1人の家族で、年に100万円ぐらい」と思えばよいでしょう。
なお、給付にあたっては、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あることという条件があります。
つまり、国民年金を払わなかった期間が長いと貰えません。
こういう事態に備えて、普段から、保険料の未納がないようにしましょう。
金銭的に苦しい場合には、免除申請を利用して、未払いになることだけは避けましょう。
「寡婦年金」
「寡婦年金」は、被保険者の「60歳から65歳までの妻」に、夫の基礎年金の4分の3が支給されます。
夫が10年以上保険料を納めており、妻と10年以上婚姻関係にあったことが条件です。
なお、支給条件は「配偶者」ではなく「妻」とされていて、夫は対象になりません。
では、寡婦年金は、いくら貰えるのでしょう。
基礎年金は40年納めた満額で、年に「779,300円」、月額に直すと「64,941円」です。寡婦年金は、これの4分の3ですから「年額で58万円、月額で4万8千円ぐらい」が上限と思えば良いでしょう。
「死亡一時金」
「死亡一時金」は、国民年金の保険料を「第一号被保険者」として3年以上納めた人が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった時に、「生計を同じくしていた遺族」に支給されます。
支給額は、保険料を納付した期間によって変わりますが、「12万円から32万円」です。受け取れる遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順です。
なお、「死亡日の翌日から2年」を過ぎると時効になって、死亡一時金が受け取れなくなります。
以上をまとめると、国民年金の遺族向け給付は、18歳未満の子がいる場合は「遺族基礎年金」、子の有無に関わらず妻が60歳から65歳の範囲であれば「寡婦年金」、どちらにも該当しない場合は「死亡一時金」が支給されます。
なお、「寡婦年金」と「死亡一時金」は、亡くなった人が第一号被保険者だった場合の専用の制度です。
サラリーマンである第二号被保険者や、専業主婦である第三号被保険者が亡くなったときは支給されません。
子供がいない場合や、子供が成長した後の配偶者への支給がない
国民年金による遺族への給付で注意すべき点は、「60歳未満で子が居ないか、子が18歳以上になった配偶者」への支給がないことです。
つまり、子育てのための資金という性格が強く、残された配偶者の生活を支える資金としては頼れません。
また、遺族基礎年金が配偶者と子供1人で年間100万円、寡婦年金が年間58万円、死亡一時金が32万円が上限となりますから、金額的にも、これだけで暮らすのは難しいでしょう。
したがって、国民健康保険/国民年金の加入者は、公的な制度だけに頼るのではなく、民間の生命保険や共済などでカバーすることが必要です。
なお、第一号被保険者である夫が亡くなって妻が残された場合は、子供の成長にしたがって受給する年金が変わります。
子供が18歳になるまでは「遺族基礎年金」、その後、自分が60歳になったら「寡婦年金」が受給できます。寡婦年金が終わる65歳以降は、自分の老齢基礎年金を受給します。
子供が成長して、「遺族基礎年金」が終わると、「寡婦年金」が貰えるまでは、年金からは支給が無くなります。この切れ目にも気をつけましょう。
【お知らせ】この記事は、2017年10月10日に内容を更新しました。