あなたが死んだ時に、遺族に出るお金【社保/厚生年金編】
社保/厚生年金はセーフティネットとして有効
万が一、自分が死亡した場合、あとに残された遺族のために生命保険に加入している方は多いでしょう。
しかし、民間の生命保険に加入していなくても、サラリーマンが死亡すると、公的保険や年金から、遺族に対してお金が出ます。
この記事では、サラリーマンが加入している社会保険(社保)および厚生年金から出るお金を紹介します。
ただし、厚生年金の計算は、複雑なので、最初に結論を書いておきましょう。
- 社会保険から出る埋葬費は「5万円」。組合健保の場合は、上乗せがある
- 「遺族厚生年金」は、子がない配偶者で40歳未満では月に「4万円~5万円」、40歳以上で中高齢寡婦加算された場合は月に「8万円~10万円」ぐらい出る
- 18歳未満の子が1人いる場合は、「遺族厚生年金」に「遺族基礎年金」が加算されるので、支給額が月に「12万円~13万円」ぐらいになる
数字をみておわかりのように、最低限のセーフティネットにはなる金額です。
なお、これは一般的な計算例ですので、具体的な数字は会社の総務部門などに確認してください。
では、個別の数字を検証していきましょう。
社保から出る「埋葬費」
社保に加入していた被保険者が亡くなった場合、亡くなった被保険者により生計を維持されて、埋葬を行なう人に「埋葬料」が支給されます。
一般的な協会けんぽの場合、埋葬費は「5万円」です。一部の組合健保では付加給付として一定の金額がプラスされます。
なお、身寄りがなく埋葬料を受け取る人がいない場合は、実際に埋葬を行なった人に、埋葬料の範囲内で埋葬に要した費用が「埋葬費」として支給されます。
遺族厚生年金
「遺族厚生年金」は、厚生年金から遺族に給付される年金です。
年金制度には例外となる条項が多いのですが、ここでは分かりやすさを優先して、一般的な場合のみを紹介します。実際に支給を受ける際は、窓口で受給条件を確認してください。
厚生年金に加入していた被保険者が亡くなった場合、国民年金の「遺族基礎年金」と厚生年金の「遺族厚生年金」を組み合わせて受け取ることになります。
したがって、「遺族基礎年金」の受給資格である「18歳未満の子がいること」を満たしているかどうかで、貰える金額が異なります。
遺族厚生年金の金額
最初に「遺族厚生年金」の金額について見てみましょう。
「遺族厚生年金」を受け取れるのは、加入者によって生計を維持していた遺族です。受け取れる遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順です。
年金額は、加入者本人が受け取るはずだった報酬比例部分の3/4になります。
報酬比例部分の計算方法は「短期要件」と「長期要件」の2通りあります。
ざっくり言うと、短期要件は加入期間が25年以下の人用で、長期要件は加入期間が25年以上で老齢厚生年金の受給資格を持つ人用です。一般には短期要件で計算します。
短期要件は障害厚生年金に準じた計算方法です。加入期間が25年未満の場合でも、25年として計算するため、加入歴が浅い人でも一定の金額となります。
「遺族厚生年金」の年金額は、加入者の標準報酬月額が30万円とした場合で約48万円、標準報酬月額を40万円とした場合で約65万円です。
なお、長期要件は老齢厚生年金に準じた計算方法になります。こちらの年金額は、これまでの標準報酬月額などによって異なります。自分の「ねんきん定期便」で報酬比例部分を確認してください。
子がいない、または18歳以上の場合
子がいない場合は遺族基礎年金がなく、遺族厚生年金のみが支給されます。
さきほど計算したように、亡くなった加入者の標準報酬月額が30万円とした場合の年額は約48万円、標準報酬月額が40万円とした場合で約65万円です。
「遺族基礎年金」の月額は4万円~5万円ぐらいと思えば良いでしょう。
なお、遺族厚生年金については、受給する配偶者の年齢によって条件が変わります。
まず、夫の死亡時に妻が30歳未満の場合、遺族厚生年金は5年間だけしか支払われません。18歳未満の子がある場合は、その子が18歳になるまで支給されます。
一方で、妻が40歳以上65歳未満の場合は、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が加わり支給額が増えます。
中高齢寡婦加算は「40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻」に対して、年額で584,500円が加算される制度です。
これは、子がいないと遺族基礎年金がなく、年金の総額が少ないのを補うことを目的としています。
中高齢寡婦加算がある場合の遺族厚生年金の金額を試算してみましょう。
標準報酬月額30万円で、中高齢寡婦加算がある場合の年金額は約106万円、月額に直すと約8万8千円です。標準報酬月額を40万円とすると、年金額は約123万円、月額で約10万2千円になります。
つまり、子がない配偶者の年金額は、40歳未満では月に4万円~5万円、40歳以上で中高齢寡婦加算された場合は月に8万円~10万円ぐらいと考えておけば良いでしょう。
18歳未満の子がいる場合は遺族基礎年金との組み合わせ
18歳未満の子がある場合は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を組み合わせて受給します。
「遺族基礎年金」は、被保険者の「子のある配偶者」または「子」に支給されます。子は18歳未満が対象で、18歳以上になると支給が止まります。年間の支給額は779,300円+子の加算額です。子の加算額は第一子と第二子が224,300円、第三子以降が各74,800円です。
亡くなった方の標準報酬月額が30万円で、子が1人としたモデルで遺族年金の金額を試算してみましょう。
遺族基礎年金は779,300円+224,300円で約100万円になります。
標準報酬月額30万円の遺族厚生年金は約48万円ですから、遺族基礎年金と合わせた支給額は約148万円になります。月額に直すと約12万3千円です。
同じように、標準報酬月額が40万円の場合の遺族厚生年金は約65万円ですから、遺族基礎年金と合わせた支給総額は約165万円になります。月額で約13万7千円になります。
つまり、18歳未満の子が1人いる場合の支給額は、月に12万円~13万円ぐらいと考えておけば良いでしょう。
子がいない場合でも支給されるのが利点
遺族厚生年金は、子がいない場合でも一定の金額が支給されるのが大きな利点です。最低限のセーフティネットとして覚えておきましょう。
また、これ以外にも、会社からの退職金などが期待できます。
ただし、それだけでは、教育費がかかる時期の子供などがいる場合は、余裕のある暮らしを送るには足りません。
成人前の子供がいる場合は、遺族の暮らしを守るためには、民間の生命保険や共済などで補うことを考えましょう。
【お知らせ】この記事は、2017年10月10日に内容を更新しました。