賃金は55歳から減り始め、60歳からはガクンと減る

[2016/4/12 00:00]

5万社以上のデータを使った賃金調査

厚労省の「賃金構造基本統計調査」という、会社員の賃金を調べる調査があります。

この調査は、都道府県や労働基準監督署の職員が調査票を持参し、回収も行なうので、回答率と信頼度が高い調査です。これを参照して自社の給与を決めている会社さえあります。

最新の調査では、10人以上の従業員がいる50,785社の回答をもとに概要がまとめられています。調査対象は2015年6月分の賃金です。

この調査を元に、50代から60代になると、どれぐらい賃金が変わるのかグラフにしてみました。

60歳になると、企業規模や男女の格差が縮まる

年代別の賃金の推移

上のグラフが、50歳以降の年代別の賃金の推移です。

企業規模と男女別に違いがわかるようにしました。

なお、「大企業」は従業員が1,000人以上、「中企業」は100~999人、「小企業」は10~99人という分類です。

グラフから分かることが、いくつかあります。

  • ほとんどの場合、55歳から賃金は下がり始める
  • 50代までは企業規模と性別による格差が大きく、2.2倍もある
  • 60代になると格差が縮まり、1.5倍となる

55歳から賃金は下がり始める

特に男性の場合、55歳から目立って賃金が下がり始めます。

これは役職定年などによって、仕事の内容が変化することが影響しているのでしょう。

役職定年は、一定の年齢に達すると、管理職から外れるという制度です。

役職手当がなくなったり、給与計算のベースが変わりますから、一般に賃金は下がります。

役職定年が制度化されていない場合でも、スタッフ的な仕事に業務内容が変わることは珍しくありません。

在職老齢年金と雇用形態の変化が理由か

50代前半では2.2倍もあった格差が、60代になったとたんに1.5倍まで縮まる理由の1つは、「在職老齢年金」です。

これは、年金をもらいながら働いていると、賃金に応じて老齢厚生年金の額が減らされるという仕組みです。

とくに、60歳~64歳までの在職老齢年金制度は、かなり厳しく、年金額と賃金(報酬)の合計が28万円を越えると発動され、一定の割合で老齢厚生年金が減らされます。

いまの60代の方は、60歳から年金が出ていますから、一定以上の賃金が出ても、年金が減らされるだけなのです。

もう1つの理由は、雇用形態の変化でしょう。

多くの企業では、定年は60歳のままで変わっていません。この場合、60歳から65歳までの雇用は継続雇用制度という制度によって行なわれます。つまり、正社員ではなく契約社員などに雇用形態が変わります。

雇用形態の変化に伴い、賃金が下がることが多いのです。

賃金の低下を考慮した生活設計を

ここまで見てきたように、多くの会社では賃金は50代前半が一番高く、55歳以降、とくに60歳を越えてからは大きく下がります。

日常的な生活費や、老後のための預金などについては、この変化を考慮しておきましょう。

いつまでも同じ賃金が続くことを前提にしていると、老後を迎える前に資金がショートしてしまいます。

[シニアガイド編集部]