賃金は55歳から減り始め、60歳からはガクンと減る
5万社以上のデータを使った賃金調査
厚労省の「賃金構造基本統計調査」という、会社員の賃金を調べる調査があります。
この調査は、都道府県や労働基準監督署の職員が調査票を持参し、回収も行なうので、回答率と信頼度が高い調査です。これを参照して自社の給与を決めている会社さえあります。
最新の調査では、10人以上の従業員がいる50,785社の回答をもとに概要がまとめられています。調査対象は2015年6月分の賃金です。
この調査を元に、50代から60代になると、どれぐらい賃金が変わるのかグラフにしてみました。
60歳になると、企業規模や男女の格差が縮まる
上のグラフが、50歳以降の年代別の賃金の推移です。
企業規模と男女別に違いがわかるようにしました。
なお、「大企業」は従業員が1,000人以上、「中企業」は100~999人、「小企業」は10~99人という分類です。
グラフから分かることが、いくつかあります。
- ほとんどの場合、55歳から賃金は下がり始める
- 50代までは企業規模と性別による格差が大きく、2.2倍もある
- 60代になると格差が縮まり、1.5倍となる
55歳から賃金は下がり始める
特に男性の場合、55歳から目立って賃金が下がり始めます。
これは役職定年などによって、仕事の内容が変化することが影響しているのでしょう。
役職定年は、一定の年齢に達すると、管理職から外れるという制度です。
役職手当がなくなったり、給与計算のベースが変わりますから、一般に賃金は下がります。
役職定年が制度化されていない場合でも、スタッフ的な仕事に業務内容が変わることは珍しくありません。
在職老齢年金と雇用形態の変化が理由か
50代前半では2.2倍もあった格差が、60代になったとたんに1.5倍まで縮まる理由の1つは、「在職老齢年金」です。
これは、年金をもらいながら働いていると、賃金に応じて老齢厚生年金の額が減らされるという仕組みです。
とくに、60歳~64歳までの在職老齢年金制度は、かなり厳しく、年金額と賃金(報酬)の合計が28万円を越えると発動され、一定の割合で老齢厚生年金が減らされます。
いまの60代の方は、60歳から年金が出ていますから、一定以上の賃金が出ても、年金が減らされるだけなのです。
もう1つの理由は、雇用形態の変化でしょう。
多くの企業では、定年は60歳のままで変わっていません。この場合、60歳から65歳までの雇用は継続雇用制度という制度によって行なわれます。つまり、正社員ではなく契約社員などに雇用形態が変わります。
雇用形態の変化に伴い、賃金が下がることが多いのです。
賃金の低下を考慮した生活設計を
ここまで見てきたように、多くの会社では賃金は50代前半が一番高く、55歳以降、とくに60歳を越えてからは大きく下がります。
日常的な生活費や、老後のための預金などについては、この変化を考慮しておきましょう。
いつまでも同じ賃金が続くことを前提にしていると、老後を迎える前に資金がショートしてしまいます。