他の国と比べると、日本のシニアは老後の準備と人付き合いが足りない
先進3カ国と比較調査
日本とアメリカ、ドイツ、スウェーデンの4カ国で同じ条件で「老後の生活」について調査したデータが発表されました。
それぞれ、60歳以上の男女で、施設に入居していない約千人を対象にした調査です。
日本の状況を、世界一の経済大国であるアメリカ、EUの主要国であるドイツ、恵まれた福祉政策のスウェーデンの各国の状況と比較することで、何かヒントが得られるかもしれません。
日本では老後の生活費への備えをしていない人が多い
まず、「老後の生活費に備える手段」を聞いています。
日本では「預貯金」が1番多いのですが、2位は「何もしていない」です。3位は「個人年金」です。
アメリカは、「預貯金」「個人年金」「債権/株式への投資」です。
ドイツも「預貯金」の次は、「何もしていない」ですが、3位は「不動産投資」です。
スウェーデンは「個人年金」が1位で、次が「債権/株式への投資」、3位が「預貯金」です。
それぞれ、お国柄によって老後の生活に備える手段が異なることがわかります。
日本における「特に何もしていない」は42.6%もあります。次に多いドイツでも26.1%なので、約16%も差があります。
日本では老後の生活費への備えを、特に考えていない人が、他の国よりもずっと多いのです。
日本では老後の備えが足りないと思っている人が多い
次に、「老後の備えとして、現在の貯蓄や資産が足りているか」を聞いています。
日本では、「足りている」という人が37.4%、「足りていない」という人が57.0%でした。
アメリカ、ドイツ、スウェーデンでは、日本とは逆に「足りている」という人が多く、「足りていない」という人が少なくなっています。
日本の次に「足りていない」という人が多いのはアメリカでした。しかし、足りていないという人は24.9%しかいません。57.0%もいる日本の半分以下です。
日本では老後の備えが足りていないと思っている人が、極端に多いのです。
日本人は、60歳以上でも、まだ働きたいと思っている
調査では「今後も収入のある仕事で働き続けたいですか」と聞いています。
4カ国とも「働き続けたい」という人よりも「もう辞めたい」という人が多くなっています。
「働き続けたい」が一番多いのは日本で44.9%した。
逆に「もう辞めたい」が一番多いのはドイツで76.6%です。
日本では働き続けたい理由に特徴がある
調査では「働き続けたいと思う理由」を聞いています。
日本とアメリカは「収入がほしいから」が1位で、「仕事そのものが面白く、自分の活力になるから」が1位のドイツとスウェーデンと、くっきりと分かれています。
しかし、アメリカの2位は「仕事そのものが面白く、自分の活力になるから」ですが、日本の2位は「働くのは体に良いから、老化を防ぐから」でした。
日本人は、働くことを面白いと感じていない人が多いのかもしれません。
近所の人と病気の時に助け合う!?
調査では「近所の人との付き合い方」を聞いています。
これは、今回の調査結果で、一番お国柄が出ている質問かもしれません。分かりやすいように国別に3位まで箇条書きにします。
- 日本
- 「外でちょっと立ち話をする程度」
- 「物をあげたりもらったりする」
- 「お茶や食事を一緒にする」
- アメリカ
- 「外でちょっと立ち話をする程度」
- 「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」
- 「病気の時に助け合う」
- ドイツ
- 「お茶や食事を一緒にする」
- 「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」
- 「外でちょっと立ち話をする程度」
- スウェーデン
- 「外でちょっと立ち話をする程度」
- 「お茶や食事を一緒にする」
- 「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」
とくに、アメリカとドイツは、想像していたよりも、ずっと密度の濃いご近所付き合いをしていることがわかります。
日本では、「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」や「病気の時に助け合う」という深いお付き合いは少ないようです。
日本では異性の友人がいる人が少ない
調査では「親しい友人がいるか」と聞いています。
日本では「同性、異性ともいない」という人が25.9%います。
これは4カ国で一番多く、2番目に多いドイツの17.1%とも、かなり差があります。
また、日本では「友人がいる」と答えている人は70%以上いますが、「同性の友人がいる」という人が多く、「異性の友人がいる」または「同性・異性の両方の友人がいる」という人が少ないのが特徴です。
例えば、スウェーデンでは、「同性・異性の両方の友人がいる」が59.2%もいますが、日本では13.8%しかいません。
「日本では異性の友人がいる人が少なく、まったく友人がいない人も多い」と言えるでしょう。
経済的に困っている人の比率は他国並み
調査では「日々の暮らしで経済的に困ることがありますか」と聞いています。
日本では「困っている」が5.9%、「少し困っている」が16.7%で、両方合わせると約22%です。
この比率は、アメリカよりも少なく、ドイツと同じぐらいです。
スウェーデンでは、福祉制度によるものか、経済的に困っているという人は少なくなっています。
現在の生活への満足度は高いが
調査では「現在の生活への満足度」を聞いています。
日本では「満足している」が30.7%、「まあ満足している」が57.6%で、両方合わせると88.3%です。
アメリカ、ドイツ、スウェーデンの3カ国は、いずれも90%を超えているので、やや低めですが、大きな差はありません。
しかし、内訳を見ると、アメリカでは「満足している」が71.1%と多く、「まあ満足している」は24.1%です。
アメリカでは、現状を肯定して「満足している」と言い切る人が多いことがわかります。
一方、日本では「満足している」という言い切る人は少なく、「まあ満足している」という消極的現状肯定の人が多いようです。
比較することで見えた日本のシニア像
最後に、この調査結果を掲載している「高齢社会白書」のまとめを引用して終わります。
本調査では、日本の高齢者の約8割が経済的に困っておらず、約9割が現在の生活に満足していると回答している。
一方で、日本は老後の備えとして現在の資産や貯蓄を不安と考える割合や家族以外の人で相談し合ったり、世話をし合ったりする親しい友人がいない割合が、他の国よりも多いという結果も出ている。
こうした点に加え、状況の変化により生活の満足度が低下する可能性も勘案して、高齢期の生活を支える取組を進めていく必要がある。