年収に係る「103万円の壁」や「130万円の壁」を意識していないパートタイマーの方が多い
パートタイマーは、どれぐらい年収の壁を意識しているのか
パートタイマー(短時間労働者)は、社会保険や所得税との関係で、一定の金額以下に年収を抑えることを意識する場合があります。
具体的には、働く時間を調整して、年収を一定の範囲内に抑えることが多く、これを「就業調整」と呼びます。
しかし、パートタイマーが、どこまで就業調整を意識して働いているのかは、なかなかわかりません。
2013年と少し前の調査になりますが、国の独立行政法人である「労働政策研究・研修機構」が、行なった調査の中に、パートタイマーの就業調整についての項目を見つけました。
この調査は、事業所経由でパートタイマーに調査紙を配布した大規模なもので、最終的に5,317人からの回答を得ています。
ここでは、就業調整に限って、内容を見てみましょう。
グラフは、レポートを元に編集部が作成しました。
就業調整をしていない人の方が多い
「就業調整の有無」についての質問では、「就業調整をしている」人は「34.5%」、「就業調整をしていない」人は57.0%でした。
つまり、労働時間や年収の調整をしていない人の方が多いのです。
就業調整をしていない理由は「年収が少ないから」
就業調整をしていない理由を、複数回答ありで聞いています。
回答が多い順に並べてみます。
- 現在の働き方では、もともと税金や控除、社会保険料等に影響する年収に届かない
- 税金や控除、社会保険料等に影響する年収になってもできるだけ稼ぎたい
- 税金や控除、社会保険料等に影響するかどうかを、特に気にしていない
- 自身で厚生年金、健康保険等に加入したい
- 制度の仕組み等がよく分からない
つまり、就業調整をしていない理由は、「年収が少ない」「できるだけ稼ぎたい」「特に気にしていない」などが多いのです。
就業調整をしている人は「130万円の壁」と「103万円の壁」を意識している
一方、就業調整をしている人の理由も、複数回答ありで聞いています。
回答が多い順に並べてみます。
- 配偶者の社会保険に被扶養者として加入するために「130万円未満」に抑えるようにしている
- 配偶者控除の適用を受けるため、「103万円以下」に抑えるようにしている
- 自身の所得に所得税がかからないよう「103万円以下」に抑えるようにしている
- 配偶者特別控除の適用を受けるために「103万円超141万円未満」に抑えるようにしている
- 厚生年金、健康保険などに加入しなくても良いよう週の所定労働時間を正社員の4分の3未満に抑えている
- 受給している公的年金が支給停止にならないようにしている。または減額率が小さくなるようにしている
- 雇用保険に加入しなくても良いよう、週の所定労働時間を20時間未満にしている
まとめると、就業調整をしている人は、「社会保険の扶養」による「130万円の壁」と、「所得税」による「103万円の壁」を意識している人が多くなっています。
さらに、60歳以上で年金を受け取りながら働くと年金額が調整される「在職老齢年金」や、20時間以上働くと加入が義務となる「雇用保険」についても、意識して調整している人がいることがわかります。
なお、2016年10月に行なわれる社会保険の適用拡大によって、新たに「106万円の壁」の存在が予想されています。
就業調整をしているパートタイマーにとって、働き方について、もう一度考える必要があるでしょう。
年収が130万円未満のパートタイマーが半数以上
最後に、パートタイマーの年収を見てみましょう。
「130万円の壁」よりも年収が少ない層は、50%を越えています。
就業調整を意識していない理由として「年収が少ない」が一番多いのも、理由があることなのです。