お葬式の費用を故人の口座から引き出せる「相続預金払戻サービス」の仕組み

[2016/9/14 00:00]

口座の持ち主が死亡すると、お金が引き出せない

家族が急に亡くなったときに、それまでの入院費用や葬祭費用などの急な出費に困ることがあります。

故人の銀行口座に残高があっても、口座が凍結されていてお金が引き出せないのです。

なぜなら、銀行では、口座の持ち主が死亡して相続が発生した場合、相続人全員の同意がないと払戻手続きができないためです。

こういう事態を防ぐために、福島銀行では「相続預金払戻サービス『これで安心』」という新しいサービスを始めました。

あらかじめ契約を結んでおくことで、万が一の場合に、家族が故人の口座からお金を引き出せるというサービスです。

このサービスの用途と実用性を見てみましょう。

自分が死んだ時にお金を引き出せるように契約しておく

相続預金払戻サービス『これで安心』は、「自分が死亡した時に自分名義の預金から葬儀費用や入院費用を支払って欲しい」という希望に応えるサービスです。

まず、預金口座を持っている「預金者」と「銀行」及び「引受人(預金者が配偶者または子の中から指定した者)」との三者間で契約を締結しておきます。

万が一の場合は、面倒な手続きをすることなく、引受人が単独で、葬儀費用等の支払いのために、申込人の預金から一定額を引き出すことができます。

なお、お金の用途は、一応「申込人の葬儀関連費用、病院・施設関連費用、生活関連費用」に制限されています。

相続預金払戻サービスの仕組み

使うためには、それなりに制限がある

しかし、実際にこの制度を使ってみようと思うと、意外と制限が厳しいことに気が付きます。

まず、「預金者」は、福島銀行に口座を持ち、“公的年金または給与振込の指定をしている満60歳以上の方”という制限があります。

給与または年金の振り込み指定をするということは、メインバンクとして、それなり使っていることが想定されています。

次に、「引受人」は、申込人の配偶者または子(養子を含む)で満20歳以上の方です。

「預金者」と「引受人」は、両方とも日本国籍を持ち、日本国内に住所を有し、成年後見制度により成年後見人、保佐人、補助人を付されていない方が条件となります。

なお、対象となる口座は、普通預金口座と定期預金口座のどちらでも指定できます。

また、引き出せる金額は、“申込人が500 万円以内で指定した金額を限度とし、当行が相続開始の事実を知った日における申込人の当行預金残高の2分の1以内”という制限があります。

つまり、残高をまるごと引き出せるわけではなく、残高の2分の1に制限されます。

これは、その後に行なわれる相続の際に、影響しにくいようにという配慮でしょう。

また、このサービスは無償ではありません。利用手数料として、年間5,000円(税別)がかかります。

年金受け取りを条件にするなら無料にしてほしい

福島銀行の「相続預金払戻サービス『これで安心』」は、これまでにないサービスで、大変興味深い存在です。

ただし、“公的年金または給与振込の指定をしている満60歳以上”という制限があるので、実際には福島銀行をメインバンクとして使っている、一定の年齢以上の人でないと使いにくいサービスです。

インターネットバンキングで、これ専用の口座を作って利用するには、ちょっと厳しい制限でしょう。

また、年間5,000円とはいえ、利用手数料がかかるのは避けたい人も多いでしょう。

給与振込や公的年金の受け取りは、銀行にとっては確実に手数料が入る魅力的な存在であり、定期預金口座の利率を上げるなどのサービスで顧客を集めています。

その指定を条件にするならば、利用手数料は無料にしてほしいところです。

福島銀行のサービスは、まだ始まったばかりです。これから、他の銀行も追随する可能性がありますので、もう少し様子を見てから行動しても良いでしょう。

[シニアガイド編集部]