胃ガンになりやすいのは「秋田県」、乳ガンになりやすいのは「東京都」
NHK出版が、新書「がんで死ぬ県、死なない県」(著者:松田智大)の出版に際して、その内容の一部を公開しました。
著者の松田智大(ともひろ)氏は、国立がん研究センターがん対策情報センター がん登録センター全国がん登録室の室長で、公開されているデータも統計に基づく信頼のおけるものです。
胃ガンと乳ガンになりやすい都道府県/なりにくい都道府県
男性の胃ガンと、女性の乳ガンについて、「かかりやすい」県と「かかりにくい」県をランキングしています。
胃ガンの場合、1番かかりやすい「秋田県」と、かかりにくい「沖縄県」の間では、3倍以上の差があります。
- 胃ガンに「かかりやすい」都道府県 (カッコ内は10万人あたりの罹患者)
- 秋田県(119.6人)
- 新潟県(109.0人)
- 山形県(106.2人)
- 石川県(98.2人)
- 富山県(96.6人)
- 胃ガン(男性)に「かかりにくい」都道府県
- 沖縄県(38.3人)
- 鹿児島県(52.1人)
- 熊本県(57.1人)
- 神奈川県(58.2人)
- 千葉県(59.1人)
乳ガンの場合も、一番かかりやすい「東京都」と、かかりにくい「鹿児島県」では2倍以上の差があります。
- 乳ガン(女性)に「かかりやすい」都道府県 (カッコ内は10万人あたりの罹患者)
- 東京都(100.8人)
- 福岡県(85.6人)
- 愛媛県(85.5人)
- 広島県(83.8人)
- 三重県(83.6人)
- 乳ガン(女性)に「かかりにくい」都道府県
- 鹿児島県(48.8人)
- 福井県(62.9人)
- 山口県(63.6人)
- 千葉県(63.7人)
- 大分県(67.1人)
ガンにかかったとしても、地域によって「死にやすさ」が違う
がんになった後で助かるかどうか(死亡率)にも、大きな地域差があります。
たとえば、全国で最も死亡率が悪い青森県は、ガンの「かかりやすさ」の数値はそれほど悪くないのに、命を落としてしまう確率が高くなっています。
一方で、長野県は「かかりやすさ」では青森県よりも悪い数値にもかかわらず、死亡率は全国で最も低いことがわかっています。
また、大阪府は、都市部で病院の数などには恵まれているにも関わらず、全国ワースト3の死亡率になっています。
- がんで「死にやすい」都道府県(男性) (カッコ内は10万人あたり死亡者)
- 青森県(205.7人)
- 佐賀県(194.6人)
- 大阪府(192.9人)
- 北海道(192.8人)
- 秋田県(192.7人)
- がんで「死ににくい」都道府県(男性)
- 長野県(150.5人)
- 滋賀県(151.4人)
- 福井県(154.3人)
- 岐阜県(162.5人)
- 三重県(162.8人)
ガンに関心がある一般読者のための本
日本人の死亡原因の1位である「ガン(癌)」について、すべての都道府県の記録が集計されるようになったのは、たった2年前のことです。
現在は「がん登録推進法」という法律ができ、ガンについて正確な統計データが集まるようになりました。
すでに、都道府県ごとの生活習慣や県民性によって「かかりやすいガン」が異なることがわかってきました。
たとえば、東北(とくに日本海側)では胃ガンが多いことがわかっています。これは、東北地方の人たちが塩分を好むことと無関係ではありません。
西日本では肝臓ガン、九州では白血病(血液のガン)が多くなっています。
今後、5年、10年とデータの蓄積が進むことによって、ガンの地域ごとの特徴が明らかとなり、ガンを克服するための有力な武器となるでしょう。
今回の新書は、その一端を一般読者向けに紹介したもので、ガンに関心のある方には興味深い内容となっています。