認知症の家族の金銭管理で難しいのは「本人に理解してもらうこと」
認知症支援の調査
銀行系シンクタンクの「みずほ情報総研」が、「認知症の人に対する家族等による預貯金・財産の管理支援に関する調査」の結果を公開しています。
この調査は、2016年10月に、認知症の人に対する預貯金・財産の管理を支援したことがある40歳以上の男女2,000人を対象に行なわれました。
ここでは、家族の行動を中心に調査結果の一部を紹介します。
必要に迫られて支援を始めることが多い
「家族・親族が預貯金・財産の管理を支援することになった理由」は、「ATMの操作・利用が難しくなった」が最も多くなっています。
2位以下も、「お金の計算が難しくなった」「窓口での説明の理解が難しくなった」と続きます。
実際に認知症の症状によって支障が生じ、支援が必要になったために家族が管理をしなければならなくなったことが分かります。
預貯金の引き出しや、振込/送金などの代行が中心
家族による支援として多かったのは、「50万円未満の預貯金の引き出し」でした。
2位は「請求書等の支払(振込・送金)」で、「定期預金の解約」「通帳・カードの再発行」など、必要に迫られての行動が続きます。
本人に理解してもらうことが一番難しい
「支援する上で、とても負担を感じる」ことは、「本人にわかるように説明すること」と「本人の同意や直筆の委任状を得ること」でした。
認知症の症状により、本人の理解や同意を得ることが難しいことが分かります。
相談相手は「家族・親族」が多い
「支援に難しさを感じた際に相談したことがある」人は72.3%です。
一番多い相談相手は「家族・親族」でした。
専門職としては「ケアマネージャーなどの介護専門職」「金融機関の職員」などが多くなっています。
専門職に相談したい内容は「家・土地の管理・処分に関すること」「税金に関すること」「相続に関すること」の3つが多くなっています。
しかし、専門職に相談するまでもないと回答している人も多く、自分の判断で処理を進めている様子がうかがえます。
孤立しないように、第三者を交える工夫を
認知症になった家族との間で発生しやすい問題として、次のようなことが挙げられます。
- 本人が自分で管理できると思っていて、納得させることが難しい
- 本人が説明を理解できず、意思を確認するのに時間がかかる
- 勘違いや物忘れが多く、質問するたびに回答が違う
- 同じことを繰り返し説明しなければならない
- 必要に迫られて手助けをしているのに、財産を狙っているなどと非難される
このような問題が起きた際に、認知症になった本人と、管理する家族だけでは、対立が深まったときに関係を維持することが難しくなります。
できるだけ、客観的な証拠を残すなどして、第三者の理解を求め、必要に応じて専門職を交え、間に立ってもらうように心がけましょう。
なお、家・土地を始めとする財産の処理にあたっては、法律関係者の手助けが必要となります。登記や相続などの内容に応じて、相談する専門家を選ぶようにしましょう。