一人暮らしの高齢男性が、経済的な不安を抱きやすい理由
一人暮らしの男性は経済的な不安を抱いている
内閣府が公開した「平成29年版 高齢社会白書」をベースにして、高齢者の一人暮らしの男女差を紹介します。
「自分の現在の経済的な暮し向き」という質問に対して、回答者全体では「心配ない」が64.6%で、「心配である」の34.8%を上回っています。
しかし、男性単身世帯では「心配ない」が50.5%に減り、「心配である」が48.4%に増えています。ほぼ半分の人が、経済的な暮らし向きに不安を抱いています。
同じ単身世帯でも、女性は58.7%が「心配ない」と答えており、男女の間では8%以上も差があります。
月収は男性の方が多い
「世帯全体の平均月収額」が「10万円未満」の人は、回答者全体では20%です。
単身世帯では、自分の分以外に収入がありませんから、平均月収は低くなります。
しかし、「10万円未満」の人の割合は、男性単身世帯が37.4%、女性単身世帯が36.8%で、ほぼ男女差がありません。
むしろ、月収が「20万円台」以上の割合は、男性の方が高く、月収は女性よりも多いのです。
つまり、男性単身世帯が経済的な不安を抱いているのは、収入が少ないからではなく、ほかに理由があることが分かります。
一人暮らしの男性の4割以上は貯金がない
「貯蓄の有無」を見ると、回答者全体では「貯蓄がない」割合は22.7%でした。
男性単身世帯では、「貯蓄がない」人が多く、46.2%と倍増しています。
女性単身世帯では、「貯蓄がない」人は30.8%でした。
女性の方が、貯蓄を心がけている人が多いことが分かります。
男性単身世帯の4割以上は「賃貸」住まい
老後の固定費で見逃せないのが住居にかかる費用です。
「今、住んでいる住居が賃貸である割合」は、回答者全体では11.7%でした。
かなり多くの人が「持ち家」に住んでいます。
しかし、男性単身世帯では、41.8%が「賃貸」に住んでいます。
特に「賃貸(集合住宅)」の割合が高く、36.3%を占めています。
女性単身世帯では「賃貸」の割合は22.9%でした。
回答者全体に比べると多いものの、男性単身世帯の半分です。
ストックの不足が不安を招く
「高齢社会白書」では、ここまで見てきた単身世帯の男女差に触れたあとで、その理由として次のように分析しています。
『男性単身者で「心配」が多いことの背景には、こうしたストック面の状況が影響していると考えられる。』
つまり、男性単身世帯は、貯蓄や持ち家という「ストック」が少ないため、月収という「フロー」が多くても、経済面での不安を抱いてしまうというわけです。
これは、男性単身世帯に限らず、高齢者全体にとって重要な指摘でしょう。
将来的に渡って、経済的に安定した気持ちで生活するために、少しでも早い時期から「ストック」を作ることを心がけましょう。