75歳以上の高齢ガン患者では、「治療なし」の選択が増える
高齢者のガンの3つの特徴
国立研究開発法人 国立がん研究センターが、「高齢者のがん治療方法」についての統計を公開しています。
この統計は、全国のがん診療連携拠点病院など427施設が、2015年に治療を行なった約70万件のデータを基にしたものです。
今回のレポートでは、高齢者のガンについて、次の3つのポイントが指摘されています。
- 65歳未満(子宮頸部では40歳未満)が減少し、高齢者の割合が増えている
- 年齢が高いほど、症状が進んだ患者の登録が多い
- 高齢のガン患者では「治療なし」の割合が多い
高齢ガン患者の場合「治療なし」の割合が増える
3つめのポイントである「治療なしの割合が多い」については、「大腸ガン」の実例を見てみましょう。
同じ「ガン」であっても、その治療方法は、その患者の症状や体力、考え方により、複数の選択肢があります。
比較的症状が軽い「第I期」の場合、「手術のみ」という選択が多く、年齢ごとの差もほとんどありません。
2番めに多い「内視鏡のみ」は、消化管、気管支内視鏡などによる治療を指しますが、これも年齢ごとの差はあまりありません。
しかし、「治療なし」についてみると、「85歳以上」の場合「治療なし」が「18.1%」あり、3番目に多い選択となっています。
この理由について、レポートでは「75歳以上の高齢のがん患者さんでは、併存疾患の有無、全身状態等から若い年代と同様の積極的な治療を行なうことが難しいと推測される」としています。
なお、この記事のグラフは、比較しやすいように、10%以上の選択があった治療方法に限っています。
実際には、「放射線」など、もっと多くの治療方法があります。ご注意ください。
年齢による治療方法の差が大きい「第IV期」
同じ「大腸ガン」でも、症状が重い「第IV期」では、患者の年齢による治療方針の違いがはっきりと表れてきます。
一番多い選択は「手術/内視鏡+薬物療法」で、75歳以下では半数以上が選択しています。
しかし、75歳以上になると「手術/内視鏡+薬物療法」が選択される割合は下がり、「手術のみ」や「治療なし」が増えています。
報告書では、その理由について、次のように解説されています。
高齢者に対する大腸がんの治療では、食事がとれるか否かといった患者さんの症状によって治療方針が異なる。例えば、腸閉塞で食事の摂取が困難な場合には、患者さんのQOLを考慮し、食事が摂取可能となるように手術を行うことが多いが、逆に食事が摂取可能な場合は、比較的がんの進行がゆっくりであることや患者本人や家族の意向から高齢者に対してあまり積極的な治療を行わない場合もある。
高齢の患者の症状によって治療方針が異なることに留意する必要がある。
つまり、高齢だからと言って、一律に治療を行なわないというわけではなく、持病の有無や体力などによって「治療なし」を選択する場合が多いということです。
自分が納得できる治療方法を
今回のレポートは、「自分や親などが、ガンになった場合に、どのような治療方針をとるか考えておく必要がある」ことを教えてくれます。
特に、患者が高齢の場合は、「積極的な治療を行なう/行なわない」から始まり、「手術のみ」か「薬物療法も行なう」など、いくつもの選択肢が考えられます。
繰り返しになりますが、ガンの治療方法は、その患者の症状や体力などにより、いくつも選択肢があります。
主治医の先生を始めとする病院のチームや家族と、よく相談して、自分自身が納得できる治療方法を選択しましょう。