独立開業を目指す人が知っておきたいフリーランスの悩み

[2017/8/21 00:08]

定年後の独立開業を誘うセミナー

「定年を期にして、フリーランス(自営業者)として独立開業して働きましょう」という趣旨のセミナーが、よく開催されています。

あるセミナーでは、「フリーランスならば自分で裁量できる範囲が広く、会社勤めのストレスとは無縁です。これまで蓄積してきた知識と経験を生かして、定年のない働き方をしましょう」と誘っています。

しかし、誰かと契約して、お金をいただく以上、そんなに簡単で楽な仕事とは限りません。

ここでは厚労省の「過労死等防止対策に関する調査研究」というレポートを基にして、フリーランスの実態の一部を紹介しましょう。

業務関係のストレスは「お金」

まず、業務に関する悩みの内容を見てみましょう。

1位は「売上・業績、資金繰り等」で、金銭にからんだ悩みとなっています。

この項目だけは、半数以上の人が挙げています。

2位は「今後の事業展開」、3位は「仕事での精神的な緊張・ストレス」でした。

出典:厚労省

業務以外でも「経済的な悩み」が1位

次に、業務以外での悩みの内容を見てみます。

こちらも1位は「経済的な悩み」でした。

お金の問題はフリーランスにとって悩みのタネであり、大きなストレスであることが分かります。

2位は「自分の病気やけが」、3位は「家族等や家庭内の出来事」でした。

出典:厚労省

長時間労働はストレスを招く

フリーランスは、会社員など雇用されて働いている場合と異なり、労働時間などに制限がありません。

「1週間当たりの労働時間と、ストレスの関係」の回答を見ると、「1週間に80時間以上」働いている人もいます。

1週間に80時間ということは、週5日であれば1日に16時間、休日なしの週7日ならば1日に11時間強働いていることになります。

「ストレスがある」という人は、回答者全体では「62.5%」ですが、「1週間に80時間以上」働いている人は「85.0%」の人がストレスがあるとしています。

やはり、長時間労働をしている人ほど、ストレスを感じていることが分かります。

出典:厚労省

長時間労働になる理由

「長時間労働になる要因」として挙げられているのは、「業種として、繁忙期と閑散期がある」でした。

例えば、年末や年度末などに仕事が集中して忙しくなる業種が思い浮かびます。また、自然を相手にする仕事であれば、季節による変動があるでしょう。

2位は「予定外の仕事が突発的に発生するため」でした。

フリーランスは、顧客対応が重要ですので、突然入った案件でも対応を迫られる場面があります。

3位の「休日に仕事が発生することがあるため」も、トラブルへの対応などが考えられます。

4位の「納期に対する顧客・取引先の要求に応えるため」も、顧客対応が優先される事情が透けて見えます。

出典:厚労省

ストレス解消は、「休日」「趣味」「家族の団欒」

蓄積したストレスや悩みは、誰に相談し、どのように解消しているのでしょう。

「仕事に関する悩みや相談をする相手」では、「家族」を挙げた人が78.5%、「友人」を挙げた人が64.6%でした。

出典:厚労省

ストレスを解消する方法としては「休日における息抜き」「趣味活動」「家族の団欒(だんらん)」が有効なようです。

これらが「足りている」いてストレスを感じている人は「42.6%」ですが、「足りていない」人は倍以上の「87.8%」がストレスを感じています。

出典:厚労省

「人からお金をいただく以上、簡単な仕事はない」

最初に紹介した「独立開業」を勧めるセミナーでは、ここで紹介したフリーランスの特徴にはあまり触れられていません。

  • フリーランスは雇用ではなく、労働時間に制限はない
  • 取引先が少数なので、相手の都合に合わせなければならないという圧力が強く、言いなりになりやすい

また、多くの会社員は、フリーランスという働き方に対して知識が少ないので、独立開業後の未来について楽観的な見方をしてしまいがちです。

会社内でも部署が異なるとよくあることですが、自分がやっている仕事は難しさが分かっても、人の仕事は難しさが分からないので簡単に見えます。

「人からお金をいただく以上、簡単な仕事はない」ぐらいに考えていたほうが安全でしょう。

また、フリーランスという仕事に、何が要求されるかは想像しにくい場合は、自分が社外のフリーランスに仕事を発注する立場にあると思って、その際に何を求めるかを考えてみましょう。

そうすれば、求められる条件の厳しさが想像しやすいと思います。

[シニアガイド編集部]