実際に起業した715人のデータが語るリアルな状況
実際に起業した人の実状
自分自身で事業を起こすことを「起業」と言います。
しかし、実際に起業を行なった人が、どれぐらいの予算で、どのような規模で始めたのかということは、あまり知られていません。
「ベンチャー」や「スタートアップ」という言葉から浮かぶ華やかなイメージを抱いている人も多いでしょう。
シンクタンクの日本政策金融公庫総合研究所が、実際に起業した715人を対象に行なった調査では、そういうイメージを裏切る、起業家のリアルな姿が明らかとなっています。
多くは「1人」で起業している
起業時の「従業員数」は、「1人」が74.6%を占めています。
つまり、起業した人の4人のうち3人は、自分一人で始めています。
「2~4人」が18.4%、「5~9人」が4.5%で、「10人以上」は2.5%しかいません。
また、起業時にくらべて、現在も、あまり従業員数が増やせていないことがわかります。
8割以上が「個人企業」
「組織形態」で見ても、84.9%は「個人企業(個人事業主)」です。
「株式会社」にしている人は12.3%、「その他の法人」は2.8%に留まっています。
「自宅」を事務所にするのが主流
「主な営業場所の立地」では、68.7%が「自宅と同じ場所」です。
「自宅と異なる場所」に事務所や営業拠点を設けている人は、31.3%です。
半分以上が「100万円未満」で起業している
「起業費用」の54.3%は「100万円未満」です。
つまり、半分以上の人は、100万円未満の少額の資金で起業しています。
7割以上は「すべて自己資金」
「起業費用に占める自己資金の割合」を見ると、75.1%は「すべて自己資金」でした。
起業費用が「100万円未満」に限ると、「すべて自己資金」の割合は91.0%まで上がります。
さすがに、起業費用が「500万円以上」と大規模になると、「すべて自己資金」の割合は35.4%まで下がります。
それでも、3人に1人は、500万円以上の資金を、すべて自己資金でまかなっていることが分かります。
4割以上は、月商が「30万円未満」しかない
では、起業後の営業成績はどうでしょうか。
「現在の月商(1カ月当たりの売上高)」で一番多いのは、「30万円未満」で42.1%でした。
どうも好調とは言いにくい状況の人が多いようです。
また、「月商」について「わからない」「答えたくない」として、金額の回答を拒否した回答者も123人いました。
起業家が、自信を持って月商を言えないという時点で、あまり良い成績を上げていないであろうと推測できます。
「500万円以上」と、上々の結果が出ている人は、10.2%に留まっています。
事業が「軌道に乗っている」人は3割
現状はともあれ、事業が成長しているのであれば、先々の楽しみはあります。
しかし「事業は軌道に乗っている」という人は、35.9%しかいません。
事業が軌道に乗っている人、横ばいの人、調子が良くない人が、それぞれ約3割ずつという状況です。
収入に不満な人が4割を超える
最後に「現在の収入に対する満足度」を聞いています。
「満足」という回答は25.8%しかいません。
「不満」が一番多く、46.5%と半数近くに達しています。
すべての起業家が成功するとは限らない
実際に起業した715人の回答を振り返ってみましょう。
多数派の回答をつなぎ合わせると、起業は「自分一人」で「自宅」で「個人事業主」で始めています。
起業のために用意した資金は「100万円未満」で、ほとんどの人が「すべて自己資金」です。
ここまで見ると、最低限の資金で小規模に始めている人が多いことが分かります。
起業後の月商は「30万円未満」が多く、「事業が軌道に乗っている」と感じている人は3割強に留まっています。
そして、現在の収入に満足している人よりも、不満に思っている人の方が、20%以上も多くなっています。
やはり、すべての人が起業に成功するわけではなく、厳しい環境に置かれていることが分かります。
起業時の従業員数と、現在の従業員数を比べても、あまり増えていないことからも、それを裏付けています。
自分自身で起業を考える時は、諸先輩方のこのような状況を頭に入れた上で、少しでも成功率を高める方策を考えましょう。