「原野商法」の被害者を、再び騙す詐欺が急増
1970年代に多かった「原野商法」
古典的な詐欺の一つに「原野商法」があります。
「原野商法」は、「将来必ず値上がりする」「もうすぐ道路ができる」などと、ウソの説明をし、ほとんど価値のない山林や原野を時価の何倍もの価格で売りつける手口です。
原野商法は、1970年代からあり、1980年代に摘発が続きました。
しかし、ほとんどの場合、騙されて購入した「原野」は、そのまま被害者の手元にあります。
「原野商法の二次被害」は、このような原野商法の被害者を、再び騙す詐欺です。
手口は、大きく3つに分けられます。
1つずつ紹介しましょう。
売却を勧誘してだます
最初は、「サービス提供型」です。
業者は、「原野商法で購入させられた土地を高額で売却できる」と言って近づき、「土地の処分のために必要な測量費が必要」と言って高額な代金を取ります。
同じ手口で、「宣伝広告費」や「土地の造成費用」などの名目でお金を取る場合もあります。
実例1
40年前に30坪と100坪の山林を購入し所有している。
2週間前、「30坪の方の土地を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、買いたい人がいるならと思い了解した。
その後、不動産業者が売るに当たり調査や整地等が必要と言われ、請求されるまま合計190万円を支払った。
売却代金が手に入ると思っていたら、「同じ人が100坪の土地も欲しがっているので調査費を80万円払ってほしい」と不動産業者が言ってきた。先に30坪の土地を売ってからにしたいと伝えたが、「まとめて売れば3カ月以内にお金が入る」という。
子に相談したところ、原野商法の二次被害に手口が似ているという。どうすればよいか。
【60代男性】
交換をもちかけて、さらに売りつける
2つめの手口は「下取り型」です。
「半年も待てば売れる土地があるので交換しましょう」などと勧誘されて、別の山林を売りつけられます。
実例2
5年前に約1,000万円で購入した山林を高値で買い取ると電話が来た。宅地建物取引業の免許を持つ不動産業者だと言うので、信用して自宅で詳細を聞くことにした。
「あなたが所有する土地を約1,250万円で買い取るが、その代わり別の山林をあなたに買ってもらい、それを3カ月後に同額で買い戻す」という話だった。
その山林を1,500万円で購入したことにして、差額の250万円を支払った。登記事項証明書は届いている。それから3カ月がたったため、山林を買い戻してもらおうと連絡したが、連絡が取れない。
詐欺にあったのであろうか。
【60代男性】
未納の管理費をでっちあげる
3つめは、「管理費請求型」です。
これは、いわゆる架空請求詐欺で、土地の管理業者を名乗って「土地の管理費が20年分未納になっているので支払え」と通知して、管理費を騙し取ります。
実例3
覚えのない管理業者から、約25年前に購入した別荘地について管理費を滞納しているので支払えとの通知が届いた。
その後、その管理業者から電話があり、「購入した別荘地の管理を担当している。管理費用が20年前から滞納となっている」として、管理費約70万円と滞納金約50万円の合計約120万円を請求された。
しかし、購入当初の管理サービスについてはすでに解約しているし、業者名も違う。あやしいので支払いたくない。
【50代男性】
「子供に残して迷惑をかけたくない」という気持ちに付け込まれる
このような「原野商法の二次被害」は、2013年頃から増えてきました。
2017年になってから急増しており、国民生活センターへの問い合せ件数は過去最高となっています。
被害者は高齢者が多く、数十年前に騙された土地を子供に残して迷惑をかけたくないという気持ちから、再び騙されてしまいます。
被害金額も増えており、平均で「467万円」に達しています。
国民生活センターからのアドバイス
国民生活センターでは、「原野商法の二次被害」に遭わないように、次にようにアドバイスしています。
- 「土地を買い取る」「お金は後で返す」などといわれても、きっぱり断りましょう
- 宅地建物取引業の免許を持っていても、安易に信用しないようにしましょう
- 根拠がはっきりしない請求には、お金を支払わず毅然(きぜん)と対応しましょう
- おかしいと気づいたり、トラブルにあったら消費生活センター等に相談しましょう
- 周りの人も高齢者がトラブルにあっていないか気を配りましょう
過去の被害を取り戻そうとして、かえって傷口を広げてしまう例が増えています。
二度目の被害に遭わないように、くれぐれも注意してください。