人生の最後を過ごす場所を考えるための3つの設問
「どこで最後を迎えたいか」というアンケート
「もし、自分が病んで、死が近いと分かった状態になったら、どこで最後を迎えたいですか」
厚生労働省の検討会が、そういう質問を含むアンケートを行なっています。
アンケートは、2017年12月に6,000人を対象に行なわれ、973人から有効回答を得ました。
ここでは、その中から3つのケースを抜き出して、結果と、その理由を紹介します。
なお、3つのケースとも「回復の見込みはなく、およそ1年以内に徐々に、あるいは急に死に至る」ことを前提にしています。
ケース1:末期がん
質問:「末期がんと診断され、状態は悪化し、今は食事がとりにくく、呼吸が苦しいが、痛みはなく、意識や判断力は健康な時と同等に保たれている場合。どこで医療・療養を受けたいですか」
ケース1では、「医療・療養を受けたい場所」で一番多いのは「自宅」でした。
ほぼ、半数の人が「自宅」を選んでいます。
「医療機関」を選んだ人が4割弱、「介護施設」が1割です。
「自宅」を選んだ理由の上位3つは、次の通りです。
- 住み慣れた場所で最後を迎えたい
- 最後まで自分らしく、好きなように過ごしたい
- 家族等との時間を多くしたい
ケース2:心臓病
質問:「慢性の重い心臓病が進行して悪化し、今は食事や着替え、トイレなど身の周りのことに手助けが必要だが、意識や判断力は健康な時と同等に保たれている場合。どこで医療・療養を受けたいですか」
ケース2では、「医療機関」を選ぶ人が多くなっています。
「医療機関」は5割、「自宅」が3割、「介護施設」が2割弱の割合です。
「医療機関」を選んだ理由は、次の2つが多くなっています。
- 介護してくれる家族等に負担がかかる
- 症状が急に悪くなったときの対応に、自分も家族等も不安
ケース3:認知症
質問:「認知症が進行し、自分の居場所や家族の顔が分からず、食事や着替え、トイレなど身の回りのことに手助けが必要な状態で、かなり衰弱が進んできた場合。どこで医療・療養を受けたいですか」
ケース3では「介護施設」が多く選ばれています。
「介護施設」は5割を超え、「医療機関」が3割弱、自宅は1割強です。
「介護施設」を選んだ理由は、次の1つが飛び抜けて多くなっています。
- 介護してくれる家族等に負担がかかる
「住み慣れた場所で過ごしたい」が「家族に負担はかけたくない」
3つのケースを見ていると、最後を迎える場所は、自分の病状や症状によって変わることが分かります。
どの回答でも「住み慣れた場所で最後を迎えたい」と考えて「自宅」を選ぶ人が一定数います。
最後を迎える際には、ごく自然な感情でしょう。
しかし、自分で身の回りのことができず、人の手が必要な病状の場合は、「介護してくれる家族等に負担がかかる」という気持ちの方が強くなり、「医療機関」や「介護施設」を選ぶ人が増えます。
「どこで最後を迎えたいかを考える際に、重要だと思うこと」という質問でも、一番多いのは「家族等の負担にならないこと」が、他を引き離して1位になっています。
自分や家族が、最後をどこで過ごすかという判断は、本人の気持ち以外に、家族構成や人間関係、経済状態などによっても変わります。
どれが正しいという答えはありません。
ただ、自分や家族がそうなったときの状態を、あらかじめ想像しておくと、いざというときにも慌てずに良い選択ができるでしょう。