自筆遺言書の一部がワープロ使用可能に。家裁による検認も不要に
相続専門税理士法人による解説
相続専門の税理士法人である「税理士法人レガシィ」が、現在の国会で審議されている相続に関係する法案についての解説を公開しています。
この解説は、転載可能なニュースリリースの形で公開されているため、下記に原文を掲載しています。
長文の引用になりますが、専門的な文章のため、あえて、そのまま掲載していることをご了承ください。
なお、引用文は表記を統一したほか、小見出しと改行を追加しています。
自筆証書遺言の方式緩和とその保管制度の創設
2018年3月13日、法務省が所管する民法関係の3つの法案が閣議決定の上、内閣より衆議院に提出されました。
一つは成人の年齢を現行の20歳から18歳に引き下げ(女性の婚姻適齢は16歳から18歳に引き上げ)、これに伴って民法及びその他の関係法令を整備した「民法の一部を改正する法律案」。
そして、もう一つは1980年に配偶者の法定相続分を3分の1から2分の1に引き上げて以来、実に40年ぶりに相続法の大幅な見直しに着手した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」。
そして、最後に法務局における自筆証書遺言の保管制度を定めた「法務局における遺言書の保管等に関する法律案」です。
今回は、これらの改正案/新設法案のうち、自筆証書遺言の方式緩和とその保管制度の創設について取り上げたいと思います。
目録などはワープロ利用可能に
まず、自筆証書遺言の方式の緩和です。
これまでは日付及び氏名を含め、その全文につき遺言者が自署することが必須要件となっていました。
新法では、財産目録の部分については自署することを要しないこととされ、ワープロで作成したもの、あるいは不動産の登記簿全部事項証明書などを別紙目録として添付し、その全てのページに署名捺印することにより、これを有効な自筆証書遺言の一部(補完書類)として許容することとされました。
本改正により、素人が書くと、しばしば記載内容の不備により、法的な要件を満たさない可能性が高かった自筆証書遺言の作成面のハードルは一挙に下がり、これまでより手掛ける方々が増えるものと予想されます。
法務局が遺言書を保管
一方で、それでも遺言者の相続発生時に検認が必要となる点、紛失の危険性が高い点など、この遺言の法的な運用・保管時におけるマイナス面がこれまでこの遺言が敬遠される原因となっていました。
今回、新設される法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設は、そうしたマイナス面に対応したもので、民法から独立した新法として「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が創設されます。
まず、遺言者は自ら作成した自筆証書につき、遺言書保管所として指定された(住所地・本籍地・所有不動産の所在地を管轄する)法務局に対して、当該遺言の保管申請を行なうことができます(代理申請不可)。
法務局の遺言書保管官は、所定の方法により、遺言者の本人確認を行った上で、当該申請を許可した遺言書につき、遺言書の画像などの情報を磁気ディスク等に保存しますが、遺言者はいつでも保管された遺言の閲覧を請求することができ、同様にいつでも自らこれを撤回することができます。
また、遺言者の死亡後、その関係相続人等(相続人や権利関係者、遺言書に記載された者など)は遺言書保管官に対して、遺言書保管ファイルに記録された事項を証明した「遺言書情報証明書」の交付や遺言書原本の閲覧を申請・請求することができることとされています。
保管された場合は「検認」が不要に
さらに、当該法務局に保管された自筆証書遺言については、通常、公正証書で作成された遺言書以外のもの(自筆証書遺言・秘密証書遺言)に義務付けられている検認手続を要しないこととされました。
これにより、相続時の検認、紛失の危険性といったデメリットも消滅することとなり、今後、自筆証書遺言のメリットや使い勝手は飛躍的に向上していくことになるものと予想されます。