年金の支給開始年齢が「68歳」になる可能性と自分への影響

[2018/4/17 00:00]

年金支給年齢が「68歳」に!?

財務省の審議会の1つで、「年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げる」という趣旨の検討資料が出て、話題となっています。

この資料の趣旨と、もし実現するとしたらどのタイミングなのかを紹介しましょう。

財務省の会議で「試案」として登場

この資料は、財務省の「財政制度等審議会」という会議の、「財政制度分科会」という分科会の資料として公開されたものです。

つまり、まだ小さな会議で検討されている政策の1つであり、実行されることが決まったわけではありません。

「そういう可能性も検討しています」という段階です。

この資料の中の「支給開始年齢の引き上げによる受給水準の充実(イメージ)」という図の中に「68歳」という試案が書かれているのです。

出典:財務省 ※赤枠は編集部が追加

目的と実施時期も検討

しかし、資料の本文を読むと、かなり真剣に検討していることがわかります。

例えば「改革の具体的な方向性(案)」という部分では、次のように述べています。

  • 支給開始年齢の引上げは、個人の生活設計や企業における雇用の在り方など大きな影響を与えるものであることから、十分に準備期間を設けて実施していく必要。
  • 具体的には、現在、男性は2025年まで、女性は2030年までをかけて、65歳までの引上げを行なっているところだが、2035年以降、団塊ジュニア世代が65歳になることなどを踏まえ、それまでに支給開始年齢を更に引き上げていくべきではないか。

このように、具体的な実施時期にまで踏み込んでおり、小さな分科会の資料の一部とはいえ、準備をした上で仕込んできたことが分かります。

なお、なぜ「団塊ジュニア世代」をターゲットにしているかというと、2035年時点の人口ピラミッドを見ると分かります。

このピラミッドの、「前期高齢者」の手前に高いピークがあります。

これが「団塊ジュニア世代」です。

それ以前の世代に比べて、団塊ジュニア世代は人口が多いため、この世代の年金の支給開始を数年でも遅らせることができれば、年金にかかる金額が大きく変わるのです。

出典:国立社会保障・人口問題研究所

自分に影響するのかどうかの判定

この資料のように、年金の支給開始年齢が「68歳」になるとしたら、それこそ「個人の生活設計に大きな影響を与えるもの」ですから、自分に関係があるのかどうかが、気になります。

資料をもとに、実行されるとすれば、いつからなのか考えて見ましょう。

ヒントは2つあります。

  • 現在行なわれている「60歳」から「65歳」の引き上げの日程を変えることには言及しておらず、予定通り行なわれる見込み。
  • 団塊ジュニア世代が65歳になる「2035年」までに、支給開始年齢を引き上げていくべきとしている。

まず、「65歳」までの引き上げに関わっている人は、現在の予定通りと見て良いでしょう。

つまり、男性は1961年4月1日生まれの「現在57歳」、女性は1966年4月1日生まれの「現在52歳」までは、従来どおりです。

引き上げの「始まり」は、これで確定しました。

では、引き上げの「終わり」はいつでしょう。

引き上げのターゲットとなっている「団塊ジュニア世代」は、一般には1971年から1974年生まれを指します。

年金の移行時は、「その年度の4月1日生まれ」が区切りになりますから、団塊ジュニア世代の先頭である1971年生まれ全員を「68歳」からにするためには、1年早める必要があります。

つまり、1970年生まれ(正確には1970年4月2日以降生まれ)の「現在48歳」から、「68歳」支給となる可能性が高いでしょう。

出典:編集部が作成

なお、年金支給年齢を「65歳」に引き上げた際は、「労働条件における男女差」を理由として、男性の方が5年早く実施されました。

もし、「68歳」への引き上げの際も、同じように男性を先行させるとすれば、男性は1965年生まれの「現在53歳」から、「68歳」支給になる可能性があります

可能性は高くないと思いますが、覚悟はしておきましょう。

出典:編集部が作成

また、年金の支給開始年齢を「60歳」から「65歳」に移行した際は、少しずつ段階を追って移行しました。

しかし、今回は「団塊ジュニア世代の年金支給を68歳からにする」のが最大の目的なので、ゆっくり段階を踏んでいる余裕がありません。

やるとしても、1962年生まれの「現在56歳」から、1964年生まれの「現在54歳」にかけて、支給開始年齢を「66歳」~「67歳」に小刻みに上げていくことしかできません。

2019年の「財政検証」の結果に注目

最後に、2018年時点の自分の満年齢から、支給開始年齢の68歳への引き上げについて、どのように対応すれば良いか、まとめましょう。

  • 男性が「57歳」、女性が「52歳」以上の場合は、支給開始年齢は変わらない可能性が高い。
  • 男女とも「48歳」以下の場合は、年金の支給開始年齢が「68歳」になる可能性が高い。
  • それぞれの中間の年齢の人は、支給開始年齢が「66歳」や「67歳」になる可能性がある。

繰り返しになりますが、今回の提案は、まだ審議会の会議資料として提出された段階で、これで年金の支給開始年齢引き上げが決まったわけではありません。

変化が見えるとすれば、2019年に予定されている「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」です。

将来に渡って、年金制度が継続できるかどうかを検証する、この見通しで厳しい結果が出ると、「年金支給開始年齢の引き上げ」の可能性が高まってくるでしょう。

そういう動きがあっても良いように、長く働くことや、確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAなどによる老後の生活資金の上積みを検討してください。

[シニアガイド編集部]