2035年の介護を考える時に見ておきたい5枚のプレゼン
2035年の介護を知るための資料
経済産業省が、将来の介護に関する報告書を公開しています。
介護と言えば、普通は厚労省の管轄なのですが、経産省も「介護機器・IT等を活用した介護サービス」などのネタがあるので、介護関係の研究会を持っているのです。
今回の報告書も、「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」のまとめという位置づけで公開されています。
この資料が面白いのは、厚労省をはじめとする他の省庁の資料を読み込み、それをもとにしてプレゼンテーションを作成しているところです。
もとになっている資料は厚労省のものでも、第三者である経産省の視点で見ているため、拾い上げているポイントやまとめ方のスタイルなどが新鮮です。
特に、「2035年の介護は、どんな状況になっているか」ということを知るためには格好の資料となっています。
5枚のプレゼンをもとに、少し先の介護の状況を見ていきましょう。
その時点での自分の年齢を考え合わせながら見ると、さらに面白いでしょう。
85歳以上の人口は2040年がピーク
まずは、日本の少子高齢化のおさらいです。
日本の総人口は、2015年の時点で、すでに減り始めています。
棒グラフの下の方が、高齢者の人口です。じわじわと増えてくるのが、よく分かります。
ちょっと変わっているのは、折れ線グラフです。
普通は「65歳以上」や「75歳以上」の比率を入れるのですが、ここでは「85歳以上」を入れています。
「85歳以上」の人口の比率は、右肩上がりを続け、2040年には9%を超えてピークを迎えます。
80代後半になると、介護が必要な人の方が多くなる
さきほどのプレゼンでは、なぜ「85歳以上」の人口を強調していたのでしょう。
それは、このプレゼンを見ると分かります。
まず、左上の「65-69歳」の円グラフを見てください。
97%は「介護未利用者」です。つまり基本的には健康で、介護を必要としない人です。
介護が必要で、介護保険の要介護/要支援認定を受けた人は3%に留まっています。
しかし、年齢を追うごとに、「要介護/要支援」の割合は増えていきます。
下の段、中央の「85-89歳」の円グラフを見ると、「要介護/要支援」が51%となり、半分を超えています。
「85歳」という年齢は、過半数の人が介護を必要とする状態になる、分岐点なのです。
要介護/要支援の人は、2040年に向けて増えていく
これは、要介護/要支援認定者の人口を示したグラフです。
認定者の数は2040年の「988万人」をピークに、増え続けていきます。
この増え方のカーブは、さきほどのプレゼンで見た「85歳以上の人口」の増え方と、ほぼ同じです。
「85歳以上」の人口が増えることで、要介護/要支援の認定者も増えていくのです。
2040年の総人口は約1億1千万人と予想されています。介護保険の認定者は988万人ですから、全人口の1割弱にあたります。
介護に携わるひとが「79万人」も不足する
要介護/要支援認定者が増えていくと、介護を担う人材が不足します。
この試算では、2035年に必要な介護の人材は「307万人」なのに対して、供給される人材は「228万人」です。
「79万人」も不足するという予想になっています。
そのための方策を提案するというのが、この研究会の本来の目的ですが、ここでは触れません。
報告書の本文をご参照ください。
対策を始めることで、介護を受けずにすむ人生を
ここまで見てきたように、2035年の介護を取り巻く状況は、なかなか厳しいことが予想されます。
それに対して、個人が準備できることはあるのでしょうか。
そのヒントが、このプレゼンにあります。
これは、「介護が必要になった原因」を、年齢と男女別にグラフにしたものです。
例えば、男性の前期高齢者で、介護が必要になる原因は「脳卒中」が36%を占めています。
「脳卒中」を予防するための食事制限や運動などの対策を行なうことで、介護が必要になる割合が3分の2に減ります。
厳しい状況が予想される介護の対象になりたくなければ、「脳卒中」対策を行なうことが有効なのです。
後期高齢者でも「脳卒中」が1位です。これに「認知症」と「高齢による衰弱」が加わります。
女性の場合の前期高齢者では、「脳卒中」が1位ですが、「関節疾患」も多いのが特徴です。
後期高齢者の場合は、「認知症」が1位となり、「高齢による衰弱」や「骨折・転倒」「関節疾患」が原因となっています。
「認知症」や「高齢による衰弱」は対策が難しいのですが、「骨折・転倒」「関節疾患」などは、食事と身体を動かす習慣によって、ある程度予防できます。
早くから対策を行ない、高齢になっても社会的活動を継続することで、自立した生活を維持するための機能を維持することができるのです。
そして、それが、将来の自分に対する、最大のプレゼントなのです。