8月から介護保険の「利用者負担割合」が最大3割に拡大
介護保険の自己負担が重くなる
2018年8月から、介護保険の「利用者負担割合」が変わります。
「介護保険」は、寝たきりなどの介護が必要な状態になったときに、各種のサービスを、その総額の一部を負担することで受けることができる制度です。
そして、「利用者負担割合」は、介護保険サービスを利用した際に、利用者が負担する割合を示すものです。
これまでは、「年金収入280万円」を境にして、「280万円未満」なら自己負担は1割、「280万円以上」なら2割でした。
8月からは、「年金収入340万円以上」という新しい分類ができて、自己負担が3割になります。
なお、ここで言う「年金収入」は単身世帯の場合です。
夫婦世帯の場合は、「346万円以上」で2割負担、「463万円以上」で3割負担となります。
影響がある人は3%
自己負担が「2割」から「3割」になれば、負担は1.5倍に増えるわけですから、ショッキングなニュースです。
しかし、いくつかの理由で、自己負担が3割になったことの影響を受ける人は、今回は多くないでしょう。
まず、単身世帯で「340万円以上」、夫婦世帯で「463万円以上」という年金収入は、ものすごく高い水準です。
2018年度の厚生年金の標準的な年金額は、夫婦2人で「月額221,277円 」、年収に直すと「265万円」です。
これに比べると、夫婦で463万円という年収が、いかに高い金額であるかが分かります。
厚労省の試算でも、介護保険の受給者496万人に対して、3割負担になる人は約12万人、つまり約3%に留まるとしています。
特別養護老人ホームなどは、月額の上限に当たる
また、介護保険には、利用者の自己負担を軽くするための仕組みが、いくつか用意されています。
そのうちの1つである、「高額介護(介護予防)サービス費」という制度では、月々に支払う自己負担額の上限が決まっていて、それ以上は払い戻されます。
そして、3割負担になる人の場合、「高額介護(介護予防)サービス費」の上限は「44,400円」です。
これが上限で、これ以上の自己負担を強いられることはありません。
例えば、特別養護老人ホーム(特養)に入居するなど、利用しているサービスの規模が大きいと、2割負担の人の負担額は44,400円に届いてしまっています。
つまり、自分の負担が2割から3割に増えても、月に支払う金額は44,400円で変わらないのです。
将来的には油断はできない
というわけで、今回の「利用者負担割合」の引き上げによって、自分の負担が増えることを心配する必要は、ほとんどありません。
しかし、油断はできません。
介護保険の予算は増加し続けていますし、経費を負担できる人には負担してもらうという政府の方針も変わりません。
現在は、ごく一部の人に留まっている「3割負担」ですが、将来の見通しとしては、多くの人が3割負担になる方向へ進むでしょう。
来年度以降の改正に向けて、「利用者負担割合」の制度がどのように変わるのか、目を離さないようにしましょう。