納税額が大幅に増えても、悩みは深い「ふるさと納税」制度
納税額も件数も大幅増
総務省が「ふるさと納税に関する現況調査」の結果を公開しています。
平成29年度(2017年度)のふるさと納税は、約3,653億円で、前年の1.28倍に上りました。
件数は約1,730万件で、前年の1.36倍になっています。
グラフを見ても、順調に伸びていることが分かります。
ふるさと納税の多い自治体 ベスト20
ふるさと納税の寄付額(受入額)が、一番多かったのは「大阪府 泉佐野市」でした。寄付額は135億円に上りました
泉佐野市が1位になった理由については、後ほど紹介します。
20位の「長野県 小谷村」でも、24億円を受け入れています。
- 大阪府 泉佐野市 135億円
- 宮崎県 都農町 79億円
- 宮崎県 都城町 74億円
- 佐賀県 みやき町 72億円
- 佐賀県 上峰町 66億円
- 和歌山県 湯浅町 49億円
- 佐賀県 唐津市 43億円
- 北海道 根室市 39億円
- 高知県 奈半利町 39億円
- 静岡県 藤枝市 37億円
- 大分県 国東市 32億円
- 鹿児島県 志布志市 30億円
- 北海道 森町 29億円
- 山形県 天童市 28億円
- 静岡県 小山町 27億円
- 静岡県 焼津市 26億円
- 佐賀県 嬉野市 26億円
- 宮崎県 高鍋町 25億円
- 岐阜県 池田町 25億円
- 長野県 小谷村 24億円
「やったもの勝ち」の現状
一方、このレポートでは「返礼割合3割超の返礼品および地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で、平成30年8月までに見直す意向がなく、平成29年度受入額が10億円以上の市区町村」を、わざわざリストアップしています。
「返礼割合3割」と「地場産品限定」は、総務省が大臣からの通知として、自治体に要請しているものですが、法的な強制力はありません。
そのため、通知に従った自治体は寄付額が減り、従わなかった自治体が寄付額を増やしています。
後者の代表が、ふるさと納税額1位になった「大阪府 泉佐野市」です。
ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で、泉佐野市のページを見ると、主な返礼品は「米」と「ビール」と「黒毛和牛」です。
「米」は精米は泉佐野市で行なっていますが、「新潟魚沼こしひかり、新潟こしひかり、北海道ななつぼしの3点セット」が主力です。
「ビール」は沖縄名産の「オリオンビール」まであり、『沖縄で生まれ育った、爽やかな生ビール』とわざわざ書かれています。泉佐野市との関係は、泉佐野市市内にある食品スーパーが提供しているということだけです。
こういう、こじつけに近いような形であっても、ふるさと納税サイトでは、「米」や「ビール」で、量が多いものという探し方をされるので、注文が集まってしまいます。
「黒毛和牛」に至っては、加工地も「京都」と明記されていて、泉佐野市とは関係がありません。
こうした形で135億円を集めた泉佐野市の状況を見ると、総務省による大臣通知がまったく無力であり、「やったもの勝ち」な状況を招いてしまったことが分かります。
もちろん、「北海道 上士幌町」や「熊本県 熊本市」のように、地域の資源を活用したり、用途を明確化することによる成功例もなくはありません。
しかし、少なくとも通知に従った自治体だけが馬鹿を見るような現状を正すためにも、「ふるさと納税」という制度が変わる必要があることを、今回の報告書は物語っています。