病気になったときに使える、4つの経済的支援制度
支援制度は申告をしないと使えない
日本には、万が一のときに身を守ってくれる、さまざまな制度が用意されてます。
分かりやすいのは、病気やケガをしたときに、経済的な支援が受けられる制度でしょう。
このような制度は、主なものだけでも4つあります。
しかし、その制度を実際に利用している人は多くありません。
ここでは、主な制度の特徴と、それが、どれぐらい利用されているかを紹介します。
万が一のときに備えて、利用できる制度を覚えておいてください。
医療費の上限が決まる「高額療養費制度」
日本では、国民皆保険制度と言って、すべての国民が健康保険に加入しています。
そのため、病気などで医療を受けた場合でも、自分で払う金額(自己負担額)は、医療費全体の3割で済みます。
しかし、医療費が高額な場合は、その3割でも負担しきれない金額になります。
その時のために「高額療養費制度」が用意されています。
「高額療養費制度」は、収入に応じて、1カ月の医療費が一定の限度額以上にはかからないという制度です。
一般的な収入のサラリーマンであれば、1カ月に約8万円以上は医療費がかかりません。
「高額療養費制度」の一番簡単な利用方法は「限度額適用認定証」という書類を申請して、それを病院の窓口に見せるだけです。それだけで、収入に応じた限度額以上の医療費が請求されません。
また、「限度額適用認定証」が無い場合でも、2年以内に申請すれば、限度額以上に支払った医療費が戻ってきます。
しかし、労働政策研究・研修機構の研究報告によれば、利用率の高い「ガン」の患者でも、高額療養費制度を利用している人は60%に留まっています。
病院に入院して手術を受けた場合には、ほぼ「高額療養費制度」の対象となりますから、利用できる人は、もっと多いはずです。
長期休業の収入が得られる「傷病手当金」
次に使いやすい制度が「傷病手当金」です。
対象となるのは、社会保険(協会けんぽ、組合健保)に加入している人で、国民健康保険には、この制度はありません。
「傷病手当金」は、ケガや病気で4日以上休業した場合、最大1年6カ月に渡って、収入の約3分の2が支給される制度です。
申請にあたっては、勤務状況などのデータが必要となるため、勤めている会社の協力が必要となります。
しかし、利用している人は「ガン」と「脳血管疾患」で25%前後、「心疾患」では10%に留まっています。
「ガンの治療において、3割以上の人が、2週間以上の長期休業をしている」というデータがあるので、制度を利用できる人はもっと多いはずです。
長期の休業が必要な場合に、一定の収入が確保できる制度なので、社会保険に加入している人は、ぜひ利用してください。
「障害者手帳」は福祉サービスの入り口
「障害者手帳」は、病気やケガなどによって障害を持っている人が、各種の福祉サービスを受けるために必要となるものです。
「障害者手帳」は、福祉サービスを受けるための、身分と障害の程度を証明するパスポートだと考えればイメージしやすいでしょう。
例えば、地方自治体による障害者手当を受ける際には、「障害者手帳」が必要となります。
また、公共交通機関などの障害者割引を受ける際にも、証明書として必要になります。
「障害者手帳」をもらうためには、一定の基準があります。まず、住んでいる自治体の窓口に相談しましょう。
今回の調査では、「障害者手帳」を持っている人が10%を超えているのは「脳血管疾患」だけです。
脳血管疾患は四肢などの障害が残りやすいので、「障害者手帳」を受けている人が多いのでしょう。
「障害年金」は生活の支え
「障害年金」は、年金制度の一部で、すべての公的年金制度で用意されています。
「障害年金」は、障害が一定の基準に達していると、年金が支給されるものです。
「障害者手帳」とは、別の基準に沿った、別の手続きが必要となります。まず、もよりの年金事務所に相談しましょう。
年金制度や障害の状況によって、支給される年金額は異なりますが、重い障害が残った場合の生活費を確保するために、覚えておきたい制度です。
今回の調査では、「障害者手帳」よりも、利用者が少なく、その半分ぐらいに留まっています。
また、障害者手帳と同様に、「脳血管疾患」の利用率が高くなっています。
せっかくの制度なので、ぜひ利用を
今回紹介した制度は、社会保険に限定されている「傷病手当金制度」を除き、ほとんどの人が利用できる制度です。
しかし、ここで紹介した4つの制度の「いずれも利用していない」という人は多く、比較的良く利用されている「高額療養費制度」と比べても、利用していない人の方が多い病気もあります。
万が一、病気やケガを負ってしまったら、上の4つの制度の中で使えるものがないか探してみましょう。
とくに「高額療養費制度」は利用できる範囲が広く、手続きが簡単で、医療費が大きく減ります。まず、「限度額適用認定証」を手に入れることから始めましょう。